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    あもり

    @34182000

    二次創作小説置き場です。
    現在格納済み:fgo、遙か3、バディミ、スタオケ、水星の魔女、マギなど色々

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    あもり

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    11/23 スパークにて会場無配コピー本として頒布した、遙か3小話です。
    遙か3本編前の八葉それぞれの情景や場面を映した,まさに小話集です。
    カップリング要素なし。オールキャラものです。
    当日お手に取っていただいた方、本当にありがとうございました。
    ※「春日望美の有在」通販購入に限り、こちらの現物をお付けしています。

    #遙か3
    haruka3

    それぞれの前夜「朔殿は大丈夫ですか、景時」
     陣幕から一人出てきた景時に向かって声をかけると、思ったよりも肩の力を抜けさせてこちらに歩み寄ってきた。
    「うん、もう大丈夫。あとは寝て回復するしかないだろうからね」
    「……無茶をさせてしまったな」
    「白龍の神子がいればまた違ってくるんでしょうが」
    「白龍の神子、か」
    「おや九郎。その声は信じていませんね」
    「そういうわけではないが……、俺はこの目で見るものでしか、判断できないだけだ」
     弁慶がからかうように声をかければ、九郎はやや眉を寄せた表情を浮かべる。嘘をつくことを知らないまっすぐな源氏の総大将は、自分の感情にも素直であった。
    「九郎らしいね~」
    「なんだと」
     褒めているのになあ、と景時は苦笑しながら、あつらえられた席に座る。弁慶は三人そろった卓に持ち出してきた書を広げる。これからの京への進め方、そして、景時と弁慶はお互い言わないがー実践として初めて源氏軍に加わった、自分たちの下にいる黒龍の神子のことを嫌でも意識せざるをえなかった。
     平家が生み出す怨霊には苦しめられてきた。しかし、それは世界が正しく回る秩序の反逆でもある。この機構を正そうとする龍神は、必ずもう一人の神子を呼び出すことも時間の問題だろう。さて、それをどうにかこの陣営に引き込めればいいが、と二人の軍師はひそかにため息をついた。


     ***

    「敦盛、寒くないか」
    「兄上」
     夜更け過ぎの事だった。ここ福原は京に比べればまだ温暖ではあったが、それでも秋の夜長は日ごとに冷やされていく。敦盛がこの体になってから、あまり寒さを感じないのだが、それでも皆気遣ってあれやこれやと貧する中でも差し出そうとする。今の経正もそうだった。どこからか調達してきたのか、小ぶりな火鉢の用意を侍従に持たせ、こうして訪ねてくれる。
    「ありがとうございます、兄上。しかしこれは他の皆にやってくれませんか。この身はもう、あまり寒さを感じないらしい」
    「……敦盛。寒さを感じなくとも、体は思ったよりも冷えているものだ。お前が風邪でもひいたら一大事ではないか」
    「怨霊も風邪をひくのでしょうか」
     思わず疑問がそのまま口から突いて出てしまった。聞いたこともない、と思ったが何しろ前例がない。何しろ自分が始まりなのだから。
    「さあな。それでも、お前には忘れてほしくないのだよ」
     ここに、といって経正は侍従に銘じて部屋に火鉢を入れ温める準備を進めてく。手慣れたもののようで、あっという間にカチ、と小さく爆ぜて火が入る。部屋の中が少し明るくなったような心地がした。その様子をぼうと眺めていると、敦盛、と再び声がかかる。その光に照らされた経正の顔もまた、敦盛と同じく熱をあまり感じさせない肌の色をしていた。
    「お前も私も怨霊かもしれない。それでも、人の形をしている以上は人間として生きることを忘れてはならないよ。……お前には人を思いやる心があるのだから」
    「……心します、兄上」

     ***

     ぼちぼち降りそうだな、とヒノエは真上に広がる曇天の空を見上げた。晩秋の京は紅葉が美しいとされるが、その燃えるような赤黄色も木枯らしに吹かれ少しずつその葉を地に落としている。
    「頭」
    「その声は鎌倉だな。どうだ?」
     熊野は各地に烏を飛ばしているが、その中でもこいつは鎌倉に潜り込ませていたやつだ。情報を制する者は特に自分たちのようにどちらに肩入れするか、見極めるためには。振り返らずにそのまま話せと続けると、慣れたように報告が続く。
    「は、源九郎義経率いる源氏一派がこのまま京へ向かうことは確実かと」
    「なるほどね。なら、しばらく京が主戦場か」
     ゆっくり休め、と声をかけて烏を下がらせる。熊野でゆっくりと身を休める日はまだ遠くなりそうだ。やれやれと首を伸ばして、やがて迫る決断の日がそう遠くないことをヒノエは感じていた。
     
    ***


    「クリスマス、何が食べたいですか?先輩」
    「やっぱチキンでしょ、それからケーキ!譲君の作るのはどれもおいしいから迷っちゃうけど、やっぱりこれは外せないかな」
    「あ、俺前テレビで見たやつ食べてえな。なんとかパイ」
    「……兄さん、全然説明になってないんだけど」
    「もしかしてCMでやってたやつ?ホットミートパイ!あれ、美味しそうだったね」
    「お、さすがだな望美~えらいぞ」
    「リクエストするからには手伝ってもらうからな、兄さん」
    「は!?」
    「そうだよー、働かないもの食うべからず、だよ!私も今年は譲先生に教えてもらうんだから!」
    「……譲」
    「何だよ。……手は多い方がいいだろ」
    「……へいへい、わかったよ」


    「クリスマス、楽しみだね」

    ***

     静かに舞っていた雪が降りやんだ。男はそれを知ってたかのように一歩、歩みだしーそして止まった。
    「……神子」
     愛おしむように囁くその言葉は、誰もいない雪原に吸われ、消えていく。それでいいというように男はその後、何も言わずにただ、ただ待っていた。

     

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    あもり

    DOODLE突然始まって突然終わる、シンドバットとユナンの幕間、ユナン視点。時間軸的には本編開始前のつもりです。シンドリアにふらっと遊びに来てはシンドバットのそばに居たいけどいられないことを痛感して離れる、みたいなめんどくさい猫ちゃんムーヴ的行動を何度かしてそうだなぁ〜と思いながら書きました。この2人もなかなか複雑でいいよね。
    不変「言った本人は覚えていない軽くて適当な言葉ほど、うっかり他人を救ってたり殺してたりするものさ」
     開放された窓から南国特有の生ぬるい風が流れてきて、適当に括った髪がそよぐ。僕に向き合うシンドバットの顔は無愛想のままだった。何もとって食いやしないのにと思っていると、
    「そっくりそのままお前に返してやる、ユナン」
    「……ふふふ、根に持つなぁ」
    「俺はお前と違って忘れっぽくないからな」
     わかりやすく捻くれて拗ねた事を言うものだから、思わず笑ってしまう。こんな分かりやすく、変なー警戒心と好奇心があいまぜになった顔。人間の表情筋ってこんな複雑に動くものなんだと感心する。
     それに、こんな人間的で複合的な表情はきっと自分以外にシンドバットは見せないだろう。八人将たちには甘えているからここまで警戒の色は混ざらないし、対外的には七海の覇王としての役どころと面の良さを存分に活かしている。かつて興行として舞台に立った経験も織り込んでいるはずだ。
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    PAST過去作_遙か3/現代ED後景望求める心はいつも

     
    聞こえるのは時計の秒針が時を刻む音、ノートの上を走るペンの音、そして自分の溜息…
    「……はあ」
    望美は本日何回目になるか分からない深い溜息と共にノートに走らせていたペンを止めた。
    そして机の上に置いたままの携帯へと視線を落とした。
    先ほどから何度携帯を開いてみても代わり映えしない待ち受け画面で望美はまた溜息をひとつ零した。

    『今が大事な時期なんだからね?』

    そう、残酷な言葉で制した人物を思い浮かべ望美は知らぬ間に眉間に皺を寄せた。
    望美も今が受験前で大事な時期だと重々承知している。…解っているのだがそれでもその言葉を聞いたときの落胆は隠すことが出来なかった。
    「…今日ぐらいいいじゃない。景時さんのいじわる」
    望美は携帯を閉じて不貞腐れたように頬を膨らませ、ペンを置くと机に突っ伏した。

    世の中はクリスマス一色に彩られ受験生の望美もささやかながら何かしたいと思っていた所で景時に釘を刺されたのだ。
    恋人が居ないならまだしも、何が悲しくてクリスマスに一人部屋で淋しく受験勉強をしなければいけないのか。不意に目の奥がツンと痛み視界が滲みそうになって慌てて首を振って紛ら 2070

    k_ikemori

    PAST過去作_遙か3/景望・オリキャラ(娘)がいます。氷原聞いて『景時を幸せにしてやんぜー!』という、勢いに任せて書いた。と、当時のあとがきに書いてあった…花かんむり


    こんな幸せがあるなんて思いもしなかった。


    風が優しく頬を撫で、包み込むように降り注ぐ太陽の光を浴びながら景時は緑の匂いのする空気を胸一杯に吸い込んだ。
    景時はぼんやりと開け、葉の隙間から差し込んでくる太陽の光の眩しさを遮るように手をかざした。
    そしてふと近くにあるはずの気配がない事に気づき、ゆっくりと首を巡らせば少し先に身を屈めて何かをしていて、その姿を捉えた事に安堵して再び目を閉じ、光を遮っていた手を下した。
    彼女と――望美と出逢う前は思い描く事もしなかった幸せが今この掌の中にある。その幸せは全て望美が運んできてくれたものだ。
    望美がいなければ願う事も、手に入れる事も、立ち向かう事すらしなかった。情けない所も沢山見せた男の隣に居てくれる。それすらも受け入れてくれた上、桜色の唇が「好き」と結んだ時は眩暈がしそうなほど幸せだと感じた。
    平家との戦が終わり、幾度もの季節が流れた。
    望美と初めて出会い、色々な花々が咲き誇る春。
    先ほどから微かに鼻腔をくすぐる花の匂いを感じて頬を緩めた。


    その時慌ただしく近づいてくる小さな足音に不思議に思い目を開けたのと、小さな影が眼前 3172

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