陣羽織 異世界である京に跳ばされてから、馴染みの制服からいつの間にかスカートを残して見たことがない奇妙な衣装となっていた。まだ着物はわかる。でも、その上に羽織っているコレは本当に何かわからなかった。
「それは陣羽織ね」
正体不明の何かを引っ張ったり揉んだり捻ったりしているところを部屋に入った朔に思いっきり見られたらしい。柔らかい笑い声と一緒に休みましょう、と飲み物を持ってきてくれた。うわぁ見られた恥ずかしい、とも思ったがそれよりも目先の好奇心が勝った。
「じんばおり」
「……って何、って顔ね」
「そんなに顔に出てる?」
「素直なのはいいことだと思うわ、私」
そうかなぁと思うが、朔の大人っぽい微笑み顔でそんなこと言われると、いいかもしれないと思ってしまう自分もいる。
照れ隠しを誤魔化すようにほかほかと湯気がたつ湯呑みに口をつける。あたたかい温度と味に、体の芯が少しほぐれる気がした。
「陣羽織はね、着物の上に纏う袖なしの具足ー簡易的な鎧のようなもの。あなたは私と同じで、対人ではなく怨霊に対しての戦いが求められるから、戦場後方に配置されるだろうし、そこまで危険はないと思うのだけれど……」
「白龍は神子をーあなたを守りたいのね」
朔の視線の意味と言葉。本当の意味で知るのは、もう少し先のこと。
この時の望美はまだ、何も知らなかった。