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    malsumi_1416

    @malsumi_1416

    習作テデ🧸ちゃん置き場

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    malsumi_1416

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    テデの夏休み企画に間に合わなかったものです
    現パロ転生記憶アリ
    日本っぽいどこかの国の幼馴染テデちゃん
    少し年の差があります
    書けたところまで

    #テラディオ

    夏休みの短編(仮)7✕11

    年期の入った据え置き型のラジヲをぶらぶら揺らしながら、通いなれた学校までの道を黙々と歩いていく。
    まだ低い位置にあるはずの太陽が時折住宅の間から瞳を刺激して、夜間に降った雨のせいか湿ったままの空気が温まりしっとりと肌にまとわりつく。
    朝の6時を過ぎたところだというのに、庭木といい街路樹といい至る所からジーウジーウと蝉たちの元気な合唱が降り注いで鼓膜の表面に張り付くようだ。
    ずっとこの土地に住んでいるのに、生まれついてこのかた頭の下地にある記憶のせいでどうにもこの〝夏〟だけは未だに違和感が拭えない。
    額を触るとすでに汗で湿ってしまっていて、くっついてしまった前髪ごと首のタオルでかきあげていると、後ろから軽やかな足音と聞きなれた高い声が段々と近付いてきた。
    無邪気で生命力あふれるそれに思わず口角が上がり、ぶつかってくる前にと振り返る。
    「ディオン!」
    「おお、テランス」
    おはよう、の挨拶に対して律儀におはようございます!と頭を下げるのは、運命なのか何なのか、打ち倒したはずの神の気まぐれか。
    〝かつての私〟が置いて逝ったはずの愛しい幼馴染だった。
    日焼けなんか気にしないと言わんばかりのタンクトップから、まだ細い腕がのぞいて勢いよく振られている。
    わたしの歩幅に合わせて歩く彼は少々速足で、見上げてくる大きな瞳に朝日が入り込んで明るい緑色に輝いていた。
    「今日のラジヲ体操当番、君だったの?」
    「そうだ。しっかりやろうな」
    朗らかさを絵に描いたような形の口から、生え替わり途中の疎らな前歯が覗いている。
    自治体の、所謂小学校子供会と言われる組織の体操当番。
    地域の子供の見本となり体操後はカードにスタンプを押すのは所属している上級学年の持ち回りになっていて、五年生の自分にも当然それは回ってくる。
    おれ、ディオンの前でがんばるね!と嬉しそうに飛び跳ねるテランスが首からかけているカードが、動きに合わせてぱたぱたと揺れる。
    ———かつての彼も、こんなに無邪気なところがあったんだったな、と急な既視感が脳裏によぎったが、丁度学校の正門が目に入ったので思考を打ち切った。


    「ねぇ、ディオン。今朝、アサガオがね」
    体操の後ラジヲを次の当番に渡して学年花壇に水をやり、人気の少なくなった通学路を二人で連れ立って歩く。
    通勤時間には少しだけ早い時間帯だというのに行きし方よりも勢いを増した蝉時雨と、それに負けない大きな声のテランスが、声量にふさわしい大きな手ぶりで話をするのが微笑ましい。
    可愛いな、というときっと怒るので言ったことはないのだが。
    「ん?」
    「おれの育てたアサガオ!きれいに咲いたんだ。だから、見に来ない?」
    自信満々が服を着て歩いている、というのはこのことか。
    頭一つ小さい〝元従者〟が跳ねるように私の周りをウロチョロと歩く中、その首に滴るキラリとした汗の雫に目が奪われる。
    今生何度も見た光景だが、やはり上から見下ろすこの角度はいつまでも新鮮で、あの頃はしゃがんで貰わないと見つけることすら難しかった彼の旋毛すらやすやすと触れられる位置にあることが何だか不思議な心地がして落ち着かない。
    子供らしい足取りでちまちまと歩を進める子供の歩幅に合わせつつ、数舜、今日の予定を頭の中に描きそう大きな用事もなさそうだと結論付けた。
    どうせ家が隣同士なのだ、朝食前に少しくらい寄り道したってきっと父母は怒りもしまい。
    『まぁ、あなたまたお隣にお邪魔してたの?仲良しねぇ』
    おっとりした母親の口調が脳裏に浮かぶ。
    息子に負けず劣らず隣の家の奥方—テランスの今生でのご母堂だ—と仲が良い母親は、同世代の連中より少々老成した考えの息子がやや年下ながらも同じ〝子供〟と積極的に関わることに好意的だった。
    それに幸いなるかな、今生の自分は両親ともに程々に目をかけられ、相応に甘やかされてきたもので。
    「なら、この後伺おうか」
    「やった!あ、それとね、庭で妹とプールするんだけどよかったらディオンも…」
    この世の幸福を集めたように破顔したテランスの笑顔が、続く言葉に萎んでいく。
    ついに立ち止まってしまった足音に後ろを振り返ると、ああしくじったな、という顔でこちらを見上げる子供の瞳とぶつかった。
    「あの、はしゃぎすぎました…」
    赤く染まった頬は、上昇する気温に引きずられたわけではないのだろう。
    いきなり“あの頃”のよく弁えた子供が目の前に飛び出して来たものだから、大真面目な本人には申し訳ないがそのちぐはぐさに吹き出しそうになった。
    ——きっと、私の従者に選ばれなければ。そなたはそもそもこんなに快活な子供だったんだろうな。
    あのころの人生のやり直し、というわけではないが、それでも過酷極まる生活の中でちらと想像したことがなかったわけではない。
    〝テランスとディオン〟が、ただの幼馴染だというだけの穏やかな生活を。
    道端にしゃがみ、恥じ入る彼の顔を見上げるように覗き込み口角を上げて見せた。
    一生懸命な思いには、真心で返すのが信条だ。
    「大丈夫。…今日は習い事もないから、喜んでお邪魔させていただこう」
    どうかお母様に伝えてくれるか?テランス。
    そう言うと再度パッと顔つきが華やいで、大きな瞳がとろんとふやけて「えへへ、うん」と幼く返事をする様が愛くるしい。
    「さて、そうと決まれば急がなければな。アサガオが萎んでしまう」
    「え!大変だ、早く帰ろディオン」
    差し出された細い腕をとり、手をつないだまま小走りで家路を急ぐ。
    ほんの少し話をしていただけでも背は汗ばみ、シャツが不快に張り付いているが、同じくしっとりと汗で湿った小さな掌を振り払う理由にはならなかった。
    まずはアサガオを観て、一度家で朝食を摂ってから。
    後は決められた自習時間が終わったら、と大まかな約束をしながら自宅への道を往く。


    「じゃあまた後でね!」
    玄関の扉が閉まる直前、「母さーん今日ディオンがねー!」と奥に向かって張り上げられたテランスの声を背に自分の家の門扉を潜った。
    小さな可愛らしいテランス。
    幾度となく反芻し噛み締めている事実ではあるが、何故かこうして記憶を持って生まれ、出来すぎな事にお隣家の次男坊がまさかかつての恋人だとは。
    数年前隣の家族が引っ越してきた際、挨拶の折に両親の足元から様子を伺っていた小さな男の子が「でんか…?、わたしのでんか!」と初対面のはずなのに大泣きしながらしがみついてきたのは今でも新鮮に思い出せる。
    訝る両親を誤魔化すのがなかなか骨が折れたのも。
    以来会うたびにべったりと張り付く三文語もようやっとの幼児から、親の目を盗んで少しずつ根気よくじっくり認識を擦り合わせてみた所、どうやら〝記憶〟はあるが端々が抜けていて、それでも私のことだけは忘れず覚えているのだと理解した。
    「おあいできて、うれしいです。でぃおんさま」と舌足らずにはにかむ小さなテランスは年齢相応の天真爛漫さが全面に出ていて、纏めて乳母に面倒をみてもらっていたあの頃の懐かしさと、自分よりも幼い子供に裏表ない好意を向けられることでなんともこそばゆい感覚とともに庇護欲を刺激されてしまい今に至る。
    つまりは、だ。
    今生、私たちは同じく近くに生を受け、幼馴染みというのは前とかわらない。
    ただ、歳まで同じというわけにはいかなかった。
    学年にして4つほど離れてしまったものだから、かつて自分を守ってくれていた広い背中は未だ薄く、頭一つ下にある背丈は記憶の中よりもずっと小さくて。
    今や滑らかでふくりとした幼げな顔つきも愛らしく、なんの柵もなく子供らしい楽しみをこちらと共有しようといつも無邪気にこちらへ走ってくる。
    あの頃も確か、彼が見つけた秘密の場所や小さな鳥の巣など、たくさんの宝物を見つけては〝ディオン〟に共有してくれていた。
    付属学校に行く直前、一時的に滞在したテランスの実家で見た青々した麦畑と、森の入り口で湧き出る泉。
    まだ世界の何たるかを知らなかった、私たちのささやかな夏の思い出。
    限られた小さな世界での、つかの間の自由だった。
    今日のアサガオも庭でのプールも、正しくそれと同列なのだろう。
    小さな頃から纏わりつくようにディオン、ディオンとくっついてきた。
    さて、懐く彼の心の底にあるのはあの日置き去りにした恋心か、それとも。
    ……それもまた、答え合わせをする時が来るのだろうか。
    (早く大きくなれ、テランス。ああでも、まだそのままでいて)
    矛盾を抱えてさざめく心は、こちらの庭を望めるキッチンの窓の向こうから私を見つけて「ディオン!」と無邪気に手を振る姿に凪いでいく。
    「ああ、また後でな」
    戦のない夏、君と過ごす何度目かの、夏の日のやりなおし。
    否、地続きで新しい日々の記録。

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    Replies from the creator

    malsumi_1416

    DONE【とびっきりをあなたに】
    公現祭とガレット・デ・ロワ、それにかこつけていちゃつくテデちゃんのお話

    ヴァリスゼアにはエピファニーはないと思うけど、例えばこんな祝祭があってもいいじゃないかと。
    二人とも、相手に幸せになって欲しいのはきっと同じだったと信じて。

    1…原作軸のどこか、21〜23歳くらいの二人 遷都前
    2…転生記憶有り現パロ、社会人で週末お泊りする感じ

    構成成分
    宗教・風俗の捏造
    とびっきりをあなたに1 <原作軸>
     オリフレムの上空、羽ばたく風圧が人々や建屋に干してある洗濯物に障らないよう注意しつつ、海からの風を捉えてゆっくりと低空を飛行する。頬を切りつけるはずの寒気の刃も、顕現してエーテル伝いに鱗を纏ってしまえば左程気になるほどではない。冬の最中だというのに眼下に広がる町並みには色とりどりの飾り紐が渡され、寒さに負けじと咲き誇る花を頭に飾った子供たちがこちらを見上げて指を差していた。
    「みて、バハムート!」
    「すっげぇ……かっこいい~」
    「ディオンさまー!」
    『…ありがとう。今日の良き日に幸いあれ』
    嬉しそうに追いかけてくる子供たちの上を二、三度旋回して寿ぐと、途端にきゃあ、と喜色を含んだ悲鳴がそこかしこから沸き上がりこちらの心まで軽くなっていく。
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    malsumi_1416

    DONE「冬に備える」
    ED後生還軸
    二人で生きると決めたテデちゃんのささやかな日常と「死者の日」について。
    過去作「味を知る話」及び前作「元使用人…」を一部踏襲しています。

    構成成分:
    石化由来の身体不自由
    風俗・習慣の捏造
    テが少々不安定

    明るい話ではないかも
    上記をご了承の上、大丈夫そうな方はどうぞ
    冬に備える ガツッ、——トン、ト、ト、ト。
    家の裏手に残されている腰かけ代わりの切り株に座り込み、手鉈を振りかぶりながら大きな丸太をひたすらかち割っていく。
    半分、もう半分…これはまだ太いからもう一回。
     もう全身至る所が石化していたため節々に少しばかり固さが残るが、去年の今頃と比較すると幾分か動きやすくなってきた身体をリハビリがてらこうして動かして、最近では家の運営にかかわる事なら少しづつ携われるようになってきた。
    けれど元々細かな作業が得意かと言われればそうでもないので、街道を外れた森に分け入り獣道を進んだ末にたどり着くこの家で出来る仕事……もとい暇潰しと言えば、もっぱら掃除と薪割りと、テランスが町から仕入れてきたり隠れ家の誰がしかがストラスの足にくくりつける手紙に紛れて寄越してくれる、野菜や果樹の種を植えている小さな畑の世話ばかり。
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    malsumi_1416

    DONE【元使用人の独白、あるいはある男の告解】
    「テデの日」に寄せて

    ある使用人の目線から見た、幼き日のテランス+ディオンの思い出とそれを踏まえた「彼」の告白

    テデちゃんがお付き合い始めたあたり

    構成成分:
    モブの回想
    弊テデの幼少期の幻覚
    テランスの姓の捏造
    テ君の出番は幼少期のみ

    モブの語りから入ります
    キャプションをご了承の上、お好きな方はどうぞ
    元使用人の独白、あるいはある男の告解

     少し、昔話を致しましょうか。
    懐かしいカモミーユのお茶は如何?
    こちらのお菓子は?
    ええ、あなた様とお会いできるからと今朝方から。焼きたてですのよ。
    ああでも、これが好きだったのは小さなあの子の方でしたわね。
    さて、どこからお聴きになりたいかしら。
    ……あら、そう。
    最初から、と。
    では、改めてわたくしとあの方の馴れ初めでもお話ししましょうか。
    懐かしいこと……あの時の事は今でも憶えてますわ。


     最初の報せが参りましたのは、凍てつく中に春の風が吹き始める頃。
    わたくし達一家が所領の倹しい我が家で、未だ残る寒さに暖炉を囲んでいた時のことですの。
    風ではなく、人の手が扉を打ち付ける音を聞いた従僕が表を確かめに行って、暫くして血相を変えて走り込んできたものですから。
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    mizutarou22

    DONEテラディオの二人がコスタ・デル・ソルへバカンスに行く話です。謎時空な現パロです。FF7リバースをプレイしていたら二人にも行ってほしくて…。リバースのネタバレは無いと思いますが一応注意してください。
    あなたが一番綺麗 遠くからさぁ……と音が聞こえる。その音は私を落ち着かせ、身体が勝手に胎児のように丸くなろうとする。しかし足を丸めようとしたところで、ふと温かい何かに当たった。そこで私は意識が少しずつ覚醒していく。目をふっと開け、視界に映ったのは……。

    「おはようディオン……目、覚めた?」

     目を開いた先にいたのは私の最愛の夫、テランスだった。テランスが微笑みながら私の髪をそっと撫でる。私はその撫でられる気持ちよさにうっとりとして、テランスがしてくれている腕枕に唇を近づけ、キスをする。

    「ああ……波の音で目が覚めてしまったようだ」

    「綺麗な音だね、ディオン」

    「ああ……」

     そう、私たちは今コスタ・デル・ソルというリゾート地へ来ている。温かい……というよりカッと太陽が照り付ける暑い気温で、ここにいる人々は薄着や水着で街中を歩いたりしていた。街も活気があり、皆楽しそうに催し物に参加したり、また様々なお店が軒を連ねており、そのなかでショッピングを楽しむ者もいた。
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