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    🏍イベ終わりの衝動で書いただけなので山なし落ちなし意味なし
    ただただマブをずっと吸っていたい妄想です
    ちなみにAルートの妄想です☺️

    #ココイヌ
    cocoInu
    #🧩リベ
    #🏍イベ

    キスした後の左胸 寒さに震えながら東京湾を越え、苦労して隣の県までやって来たと思ったら東卍だのICBMだの見知った連中と揉めるなんて東京にいるのと大して変わらないし、やっとのことでカフェに着いて時間を見てみればすでに出発してから二時間近くが経過しようとしていた。電車の半分の時間で来れると言うからバイクで来たというのに。結局電車で来るのと同じだけの時間を費やしてしまっていた。

    「こんなことなら電車で来れば良かったよ!」
    「でも、こういうのもたまには悪くないだろ?」

     乾が満足気に笑って言った、もし最初から電車なら多分乾は一緒に来ていない。まあ、乾が楽しめたなら九井にとってこのツーリングの目的は半分達成したようなものだ。

    「……たまには、な」
    「……素直じゃないな」

     なんか言ったか? と言う九井の言葉が届いていないような顔で乾は持っていたバイク雑誌に視線を落としていた。ふん、と鼻を鳴らして九井も手元の小説に視線を落とす。
     目的のカフェ自体はウッドテイストで雰囲気が良かった。アコースティックギターかなにかのBGMが読書の邪魔にならない音量で流れていて、今だけは金の事を忘れてビジネス書ではなくゆったりと本来好きな小説を読む。去年に賞を受賞したと新聞で見かけて、ずっと読みたくて気になっていた作品だった。やはり読み応えがある、全てをここで手早く読み終えてしまうのがもったいような気さえする。
     ふと窓の外を見るともう薄暗くなっていて、夜と言っても差し支えない暗さだった。昼間でさえ耐え難い寒さだったのに、この太陽の沈んだ暗い中またバイクで戻ることを考えると憂鬱だった。

    「なあ、イヌピー」
    「んー?」

     雑誌のページをめくりながら、乾が気のない返事をする。

    「このままどっか泊まってかねぇか?」

     バイク雑誌を離れてコーヒーのカップに伸ばされた乾の右手がピタリと止まる。雑誌をそれたヘーゼルグリーンの瞳が、頬杖をつく九井の方を見た。店内中に散りばめるように灯る暖色の明かりが乾の瞳の中で煌めく。

    「お待たせしました」

     熱いのでお気をつけください、そう言って店員が一礼して下がる。グツグツと小さく音を立てるグラタンは確かにとんでもなく熱そうだった。

    「泊まるってどこに?」
    「どっかしら空いてるだろ、閑散期だし」
    「けど俺ら何も持ってきてねぇだろ」
    「今どき下着くらいコンビニで売ってるって」
    「……そうか」

     金だとか自分たちが未成年だとか、起こりうる面倒事は全て自分に任せればいい、そんな九井の態度を察して乾は黙った。
     そろそろ冷めただろうか、九井はグラタン皿を指先で少し触って確認するとフォークを握った。所々焦げ目のついた薄く固くなったチーズを割ると、中から湯気が立ち込める。

    「そうと決まったら宿探そうぜ、確か向こうの方に旅行雑誌並んで」

     恐る恐る口に含んだマカロニの熱さに悶える九井を尻目に、乾が閉じたバイク雑誌を持って立ち上がる。

    「猫舌のクセにそんな熱いものなんか頼むからだ」
    「うっせーな、冬に温かいもん食って何が悪ぃんだよ」
    「で、どっちだって? 旅行雑誌」

     九井の指さした方へ、乾のコツコツとカフェの木床を打つ低めの足音が遠ざかっていく。何とかグラタンが食べれるくらいの温度になった頃、乾が数冊の旅行雑誌を持って戻ってきた。雑誌の表紙をめくると、見開き一面に露天風呂の写真と天然温泉と大きく書かれた宿のページがどんとあった。

    「この辺って温泉地なんだな」

     ここは東京からそう遠くなくて、知っている地名の土地であったが温泉があるとは知らなかった。乾もそうだったようで「なっ」と短く同意の返事をする。良さそうな宿をいくつかピックアップして、電話をかけてみると一件目ですぐに部屋を取ることが出来た。カフェからさらに十五分ほど南に行ったところにある、東京からは少しだけ遠ざかるがいいだろう。露天風呂付きの客室だけあって値段はまあするが、こちらはクリスマスに入った臨時収入で十分事足りる。

    「身分証とかどうすんだ?」
    「“こういう時”の為の身分証ならちゃんと持ってるぜ」

     生年月日と名前を詐称した偽装免許は財布に忍ばせてある。使い所を間違えなければ、持っていて役に立つ時があるのだ。それこそ今回のような場面で。

    「ありがとうございました」

     営業時間めいっぱいまでくつろいでカフェを出た、時刻は十九時。暖かな暖房のかかったカフェの空気から一気に凍てつく夜の海の空気に変わる。頬に体温を根こそぎ奪っていきそうな真冬の風を受けて、九井は巻いていたマフラーを鼻の高さまで上げる。


    「二十時までに着かないと飯食い逃すぞ!」
    「ココお前、まだ食う気かよ」
    「当たり前だろ宿泊代に入ってんだから、つかマジ風冷たすぎ」

     いっそう強い風が吹いて、「ヤバイヤバイヤバイ」と二人でひーひー言いながら停めてあるバイクへと向かう。バイクのエンジンを温めてる間、携帯で撮った旅行雑誌の写真を見て旅館の位置を再確認する。

    「道案内頼むぜ」
    「うちの運転手さんは方向音痴だからなぁ」

     この寒さの中また逆方向なんて行かれたらたまらない。互いにアウターのジッパーをめいっぱい首元まで上げてフードを被るとバイクが海沿いの国道へと出る。暗闇を照らすバイクのライトに細かな物がチラチラと反射する。

    「は!? 雪降ってんのかよ!」

     どうりで寒いわけだ。東京湾をはさんだ向こう岸が来た時は見えていたのに、今は夜の闇に紛れて何も見えない。自分が目を瞑っているのかと錯覚してしまいそうな程に今の海には光がない。天気が悪いせいもあるだろう。街頭だらけの静かな都会の海辺とは少し違う雰囲気だった。恐怖さえ感じる。冬の荒れた海の波音がバイクの排気音に紛れて聞こえる。辺りを走ってる車がほとんどない事が、よりいっそう不安にさせた。このまま二人きりでどこか知らない暗い世界に迷い込んでしまうのではないかと思える。
     九井は乾の腹の下に手を回すと、グッと抱きついた。

    「寒いか? 大丈夫、もうすぐだココ」

     信号待ちでグリップから手を離した乾が九井の膝をトントンと軽く叩く。
     そうじゃない、寒いんじゃなくて、夜の海を見て不安になった、なんて到底言えるはずもなく信号が青になってバイクは再び走り出す。

     予定通り十五分ほどで宿に着いてチェックインを済ませ、部屋の案内と説明を終えた仲居が部屋から出るのを確認した乾は掃き出し窓の外を眺める。
     窓からはたっぷりと湯の入った黒い壺風呂型の浴槽が見えた。そこから白い湯気が立ち込めている。

    「すっげぇ、露天風呂付きの客室なんて初めてだ」
    「入ってる時間なんてないぜ? すぐに夕食持ってくるって言ってたろ、風呂はその後だ」

     とりあえずコート脱げよ、とクローゼットの前で九井が乾に手を差し出す。渡されたコートをハンガーにかけてから、和洋室のベットに身を投げ出す。一方でリモコンに手を伸ばした乾がチャンネルを回している。ドラマ、刑事物、ドラマ、何かの事件の再現VTRを流しているバラエティ、趣味番組、交響楽団の演奏、と次々変えていくがめぼしいものがなかったのかすぐに電源ボタンを押して消してしまった。

    「なんもやってねぇ」

     妙に時間が余ってしまった。ただ待っているだけだと、時間の流れが遅く感じる。こういう時は時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。時計を見つめていた二人の視線が不意にカチリと合う。

    「そういやイヌピー、今日バイク出してくれてサンキューな」
    「ああ、どうってことねえよ、泊まりがけになるとは思わなかったけど」
    「だってこんな真っ暗で寒い中一時間以上もバイク乗ってられっかよ」
    「そういや俺らってあんまバイクで遠出とかしたことなかったよな」
    「二人乗りじゃ荷物ほとんど持って来れないだろ」

     二人乗りにあまり遠出は向いていない。というか後ろに乗る同乗者自体がデカい荷物みたいなもんだ。

    「でもこうして泊まれてるし、荷物なんか案外なくてもどうにかなるもんだな、ココがいれば十分だ」
    「お前……そんな背中が痒くなるようなことよく平気で言えるよな」

     乾が首を傾ける、痒いなら背中をかいてやろうかとでも言い出しそうな顔だった。
     コンコンと部屋のドアがノックされて、夕食が運ばれてくる。早々にメインを食べ終わって甘味に手を付ける乾を横目に、九井は乾が残した吸い物や添え物の野菜や香物を端からつまんでいく。夕食を終えた後、乾は待ちきれんとばかりに服を掃き出し窓のすぐ横に脱ぎ捨てると露天風呂へと向かった。

    「イヌピー! ちゃんと体流してから入れよ」

     雪は未だに止むことなく降り続いていて、目隠しの向こうで静かに降り注いでいるのが見える。かけ湯をして湯船につかる乾に続いて手早くシャワーで髪も身も洗ってから九井が壺風呂に入る。二人で体育座りをしてやっと入ることが出来る程度のあまり横幅のない深めの浴槽だった。少し動く度に波立つ湯が浴槽から溢れていく。皮膚にしみるような熱さだった湯が、だんだん心地よくなってきて火照った体を雪の降る冷たい外気が程よく冷やしてくれた。ふと何かに気づいたように、九井が乾の二の腕を掴んで、その後ろのあたりを指でなぞる。

    「ここんとこ、でっけぇアザになってる、今日のやつか?」

     日頃から喧嘩三昧の日々を送っている、アザなんていまさら珍しくも何ともない。

    「ココだって、ほら」
    「あー、これクリスマスに三谷に殴られたやつだ」

     消えかけた薄黄緑色のアザが手首の少し上にある。前腕部は相手の攻撃を受ける事が多いのでアザがよく出来る部位だ。特服を着ていると分かりづらいがお互いよくよく見ると体はアザだらけだった。

    「ボロボロじゃん俺ら」
    「ほんとだな」

     笑いあって、また無言で雪を見つめる。こうして湯に浸かりながらぼっーとしていると、いつもは考えないようにしている事が頭に浮かんでくる。
     九井は赤音がもし生きていたら今頃歳はいくつで自分達はどうなっていただろうかと考え、そして乾はあの図書館でのキスの事を思い出す。避けるようにしてきた心のアザみたいな部分はいつまでも治らずに放っておかれている。

    「髪洗う」

     先に湯船から上がったのは乾だった。程なくして九井も風呂から上がり、互いに寝支度をして電気を消すまでほとんど会話をしなかった。なにか喋らなければだとか、そういった気を使うような間柄ではない。黙っているのが心地良ければただ黙って互いに一緒にいる。喋っている時よりも黙って一緒にいる時の方が互いの事をよく分かり合えているような気さえした。そのせいなのか、本当にしたい大事な話はいつも出来ないでいる。

     乾が寝返りを打って、布団と浴衣が擦り合わさる布の音がする。隣のベットの九井はこちらに背を向けている。「ココ」と控えめに名前を呼ぶ。

    「もう寝ちまったか?」

     寝たフリを決め込もうかと迷った九井だが、結局乾に背を向けたまま「なんだよ」と返事をした。

    「そっち行っていいか」
    「は?」

     九井が驚いて振り返ると、すでに乾はベットを抜けだしてすぐ側まで来ていた。

    「せっかくツインなのに、なんでわざわざ一緒に寝るなんてバカな真似しなきゃいけねぇんだ」

     いつもアジトで寝る時はソファで場所の取り合いだ。二人で寝るには到底せまいソファで結局最後は背中を預けあって、首を痛めながら座って浅い睡眠に耐えていた。

    「ベットに一人じゃ広すぎて落ち着かねぇんだよ」
    「知るか、おい勝手に入ってくんな!」

     九井がベットに入り込もうとする乾を足でグイグイと蹴り出す。

    「で、て、け」
    「い、や、だ」

     子供のような攻防戦を制したのは乾だった。「もう!」と怒りを吐き出した九井は抵抗するのを諦めて布団の中で胎児のように丸まる。そしてしつこく後ろからコアラみたいに抱きついてくる乾の手をつねる、攻防戦の第二ラウンドが始まった。

    「抱きつくなホモ」
    「ホモはそっちだろ、図書館で寝てる俺にキスしてきたくせに」

     またしても乾に勝負の軍杯が上がる。

    「さっき二人乗りしてた時だって急に抱きついてくるし」

     九井は自らの腕枕で横になりながら、絶対に目を合わせまいと窓の外を見つめ続けている。このまま黙りを決め込もうとする九井の態度に、乾はイラついたように上半身を起こした。キスしたり抱きついたりと自分からはちょっかいをかけるくせに、いざこちらが向き合おうとするとこれだ。本当にわがままで勝手でイラつくけれど、後から思い出してみると何故か愛しい気持ちになる。
     花垣にカフェの事を教えた時の九井の顔なんて酷いものだった、不満そうに曲げられた細い眉をハッキリと覚えている。ただでさえつり気味の目元を片方だけさらに釣り上げて、いかにも気に食わないというような態度で花垣を睨みつけていた。恐らく嫉妬していたのだろう。

    「ふふっ」
    「何笑ってんだよ」
    「今日ココが図書館カフェに行きたいとか言いだした時、正直ビックリした」
    「なっ、違っ……カフェは普通に気になったから」
    「ふーん」

     布団に入ってから背を向け続けていた九井が、やっとこちらに目を合わせた。互いに横になったままベットの中で向かい合う。

    「何が言いてぇんだよ」
    「別に……ただ、たまに思い出すんだよお前が俺にキスした時の事」

     乾はゆっくり手を伸ばして、その表情を隠そうとするように頬に被さった艶のある黒髪を耳にかけてやる。

    「忘れられない」

     伸ばされた手で九井の顔をぐっとこちらに向かせたまま押さえる。そうして乾から逃げようとする視線を捕らえる。けれど最後の抵抗とばかりに、九井は光を見つめる猫みたいな細い黒目を気まずそうに伏せたままだった。
     その額にキスをする。そっと、少し長めに。図書館でしたキスもこんなキスだった。唇を離したあと、九井がもぞもぞと布団の中で動いて乾の腕の中深くに潜り込んでくる。心臓の音を聞くように顔をピッタリと胸にくっつけてきて、乾の左胸のザワつきを満足そうに聞きながら眠ってしまった。

    「おやすみ、ココ」
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    ギギ@coinupippi

    DONEココイヌだけどココは出て来ない。
    またモブが出張ってる。
    パフェに釣られてイヌピーがJKからココの恋愛相談を受ける話。
    逞しく生きる女の子が好き。
    特大パフェはちょっとだけしょっぱい。乾青宗はその日の夕方、ファミレスで大きなパフェを頬張っていた。地域密着型のローカルチェーンファミレスの限定メニュー。マロンとチョコのモンブランパフェは見た目のゴージャス感と、程良い甘さが若者を中心に人気だった。
     そのパフェの特大サイズは3人前程あり、いつかそれを1人で食べるのが小学生からの夢だった。しかし値段も3倍なので、中々簡単には手が出せない。もし青宗がそれを食べたいと口にすれば、幼馴染はポンと頼んでくれたかもしれない。そうなるのが嫌だったから青宗はそれを幼馴染の前では口にしなかった。
     幼馴染の九井一は、青宗が何気なく口にした些細な事も覚えているしそれを叶えてやろうとする。そうされると何だか青宗は微妙な気持ちになった。嬉しく無いわけでは無いのだが、そんなに与えられても返しきれない。積み重なって関係性が対等じゃなくなってしまう。恐らく九井自身はそんな事まるで気にして無いだろうが、一方的な行為は受け取る側をどんどん傲慢に駄目にしてしまうんじゃ無いかと思うのだ。
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