愛しい影【決裂に向かうバッドエンドマハグリュです。暗い話好きな人どうぞ】
それは事故だった。
視察中、精神解析の魔法が誤作動を起こしグリュックに直撃した。解除自体は外部の精神魔法の専門家がほどなく対応できるとのことだったが、人類に伝播する可能性があるため、到着まではグリュックを安全のため隔離することになった。
「私は魔族です。精神の在り方が違いますので影響は受けないでしょう。」
マハトは見守り役を買って出た。領主に忠実な僕で、魔力も力も強いマハトはまさに適任、領主と2人きりになることすら、誰からも警戒されない。
静まり返った部屋の中で、グリュックの独り言や空笑の声だけが響いている。
(確かに異様だ。)
どうやらグリュックは、その短い人生を追体験させられているようだ。幸せそうに微笑んだかとおもえば、両手で顔を覆い涙をこぼし、静かに怒り、その表情はくるくると変化する。
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