波のフリルで踊っていてよ 波の音と混じる歓喜の声が、夏の青空へ吸い込まれていく。太陽に焼かれた熱い砂の上を素足で駆けていく少年たちの後には、脱ぎ捨てられたスニーカーが残った。光る青海原は手招くように波を寄せて返し、目にした者の心を永遠に炎夏に留めようとしていた。
「──全く、あんなにはしゃいじゃって」
パラソルの下で太陽から身を隠しながら、彩子が困ったように笑った。その視線の先には、部員たちに混ざってすっかり役目を忘れている宮城がいる。
時折ランニングコースにしている浜辺を訪れた湘北高校バスケットボール部は、いつもより賑わいを見せるその場所が、数日前に海開きをしたのだと分かって、皆少しだけ浮き足立っていた。予定通りランニングを終えたものの、そわそわしている部員たちの様子に、キャプテンの宮城から「十分だけだぞ」とお許しが出たので、部員一同束の間の休息を取ることになったのである。
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