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    QQaL5FoqTa

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    QQaL5FoqTa

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    花流です。復帰後流川に追い付きたい花道と、追われるうちにいつの間にか花道が唯一の存在になっている流川の話です。
    ※花道が後輩女子にモテます※
    「終生のライバル」という二人の関係が好きで、昨年の花流の日に投稿した前半部分に、当初構想練ってはいたものの間に合わず諦めた後半部分を追記しました。

    #花流
    flowerFlow

    炎陽 その熱視線は、真夏の太陽の如く容赦無く流川の肌を焼いた。
     
     全てを日の下へ晒せと言い募るかのようなプレッシャーは、視線の主に似合わずひどく冷静で、まるで狙いを定めた獲物と対峙する捕食者のそれを錯覚させる。不躾な程真っ直ぐで、汗で張り付くウェアよりも余程鬱陶しい。流川がコートに立つ度に追いかけて、一挙手一投足を逃すまいと食い入るように見つめてくるのだ。
     桜木に切っ掛けを与えたのは師の教えだったが、その経緯を流川は知る由もない。しかし、顔を合わせれば喧嘩の売り買いをするしかなかった相手の変化を感じ取るのは容易かった。それほど桜木が、熱を込めた眼差しを注いでくるから。
     
     違和感なら、疾うにあったのだ。
     
     激情に体を奪われ打ちつけた掌が持った熱。
     波打ち際でファスナーの引き手に触れた時の鼓動。
     桜木が復帰を果たした日に交わった視線。

     部員達に囲まれ歓迎を受ける桜木が、それを少し離れた所から傍観していた流川をはっきりと見た。揺るがず、曇り無く、力強く、覚悟を決めた男の目が、「逃がさない」と告げていた。刹那、流川は桜木の本気を理解した。
     もっとも、流川とて逃げも隠れもする気は毛頭無いのだった。
     
     
     まるで焼き尽くさんと言わんばかりの桜木の熱は衰えることを知らぬまま、冬を越し春を迎え、二人は進級した。校内は初々しい活気に満ちて、部にも新顔が増えた。昨年のインターハイの影響は部員達の想像の範疇を超え凄まじく、バスケット部は入部希望者のみならず新入生全体から一目置かれる存在となっているようだった。とりわけ流川に熱を上げる者は後を絶たず、毎日入れ代わり立ち代わり、体育館のギャラリーは増え続ける一方であった。しかし、それは流川にとって取るに足らないものであり、どんなに熱烈な眼差しだろうと、全ては蚊帳の外である──桜木花道というただ一人を除いては。
     まだ足りない。上手くなりたい。流川に勝ちたい。シンプルに研ぎ澄まされた欲望が桜木を駆り立てる。もっと寄越せと流川に迫る。有象無象の中で唯一、桜木の殺気にも似た執念だけが、季節外れの真夏の太陽となって流川の肌をじりじりと炙る。羨望の眼差しを何百何千と注がれようと、流川に届いたのは桜木の鋭い眼光だけだった。流川が、挑発的に一瞥をくれる相手もまた、桜木花道だけだった。
     
     そうして、二人が一年前には考えられないような冷静な火花を散らし続けていたある日、「切磋琢磨する」という信じ難い日常を、それは唐突に切り裂いた。
     もはや習慣にすらなっていた威圧感が、流川の前から消えた。いつもなら、放課後体育館に流川が足を踏み入れた途端、待っていたとばかりに手足の枷となろうと絡み付いてくるのに。それどころか、流川だけを射抜く閃光も、その身すら燃やすかのような情熱も、ここ暫く流川が肌で感じていたものがどこにも存在しない。あまりの違和感に、流川は思わず周囲を見渡しその姿を探してしまった。そもそもまだ来ていないのかと思われたが、まだ人が疎な体育館の一角にその男──桜木はいた。部活動が本格的に始まる前の時間を利用し、シュート練習を行っているようである。普段と変わらない真剣な横顔が見えて、しかし、流川はますます眉間の皺を深くした。何も問題は無いように見えるのに、それなら尚更、いつもの気迫はどこへ行ったのだ。突き刺すような燃える瞳が何故己を見ないのか。訝しむ流川の目の前で、桜木の手からボールが放たれる。それは緩やかな弧を描いて、軽やかにネットを揺らし──途端、開け放たれていた外部用扉の付近が色めき立った。流川をはじめ、その場にいた部員達の視線が一点に集中した先にいたのは、幾人かの女子生徒達であった。
     部活動が始まると、流川の違和感は決定的なものになった。桜木は動きが硬く、集中力が欠けていた。理由は火を見るよりも明らかで、桜木自身も自覚しているようだった。外部用扉を避けるような、意識して目を逸らしているような、そんな苦悩が見て取れた。女子生徒の出現に困惑し、生まれて初めての異性からの好意的な視線を受け止め切れず、集中したいのに空回る状態に陥ってしまっている。桜木が真剣に取り組もうとしていることは、部員全員がその態度と表情で分かっていた。それは流川も例外ではなく、だからこそ余計に腹が立った。
     ここ数ヶ月、毎日のように流川の肌を焼いていたあの熱視線は何だったのか。流川だけを追い求めているようなプレッシャーは、逃さないと告げた眼差しは。少し状況が変わったくらいで、続けられなくなる程度のものだったのか。
     ──この前の帰り道、不良に絡まれた一年の女子を助けたらしいよ。
     部活動が始まる直前、女子生徒達の歓声を聞いた石井達二年が耳打ちしていた。
     ──元々うちの高校じゃ有名人だし、それがきっかけで一年の間で優しい人なんだって噂されるようになったらしい。この前も廊下で声掛けられたんだって。
     それがどうした。流川は憤りを募らせて桜木を睨む。こんなに流川が見つめているのに、今日はまだ一度も桜木と目が合わない。桜木が復帰を果たして以来、こんな事は初めてだった。どれほど流川が突き放そうとしても、何度力の差を見せつけても、桜木が流川から目を逸らすことはなかった。怯むどころか一層獰猛な闘志を剥き出しにして、呆れる程愚直に流川にぶつけて来た癖に。今交わらない視線が、返ってこない反応が、流川を更に苛立たせる。自分以外に心掻き乱される桜木が許せない。第三者の存在が、桜木の頭の中を占めているだろう事実が我慢ならない。桜木の視線も心も、それが向く先にいるのは絶対に流川ただ一人であり、その場所は他の誰にも譲りたくない。
     気付けば、流川の足は自然と桜木の元へ向かっていた。こちらを見ようとしない桜木を前に、まるで今度は己が太陽の熱を求めてしまっているようで不愉快だ。何故こんなに桜木が気になるのか、心をざわつかせるこの昂りは何なのか。流川は、その答えを知るために桜木の眼前に構える。
    「どあほう」
     苛立ちを隠そうともしない険のある低音に、桜木は応戦する気配を見せた。途端、空気が緊張を孕む。桜木が流川に憎まれ口を叩きに行くことはあっても、流川から接近するなんて滅多に無い現場に、部員達はぎょっとして固唾を呑んだ。桜木を目で追っていた女子生徒達も、いつの間にか増えている流川目当てのギャラリーも、険悪なムードを察して流石に口を噤む。
    「てめー、余所見してる暇あんのか」
    「あ?」
     今日初めて桜木と目が合って、流川は舌打ちをした。流川に肉薄すべく日々気迫が増していた桜木が、そこにいなかったからだ。流川だけを見つめるための瞳が、焦熱を放つ太陽が、困惑の色を浮かべ翳り、頼りなく揺れている。流川は、腹が煮え返る思いで吐き捨てるように言う。
    「腑抜けたツラしやがって。どこ見てやがる」
    「なんだと」
    「どあほうのくせに、どうでもいいもんに気ぃ取られてんじゃねー」
    「っ……うるせえ」
    「てめーは必要な分しか頭に入んねーんだから、必要なもんだけ黙って見てろ」
    「おい、キツネてめー、さっきから何──」
    「俺を見ろ」
     流川が桜木の至近距離に迫り、踏み込んだシューズの床を擦る音が体育館に響いた。四方から大勢が見守る中、桜木が息を呑んだことに気付いたのは流川だけであった。
    「てめーは俺だけ見てればいい」
     その一言で、桜木が息を吹き返す。合わなかった焦点が流川を捕らえて、やがて真っ直ぐ見つめ返す。己だけを映す瞳が鋭く光って、煌々とした情熱の火を焚べ始めたのを認めて、流川は背筋をぞくりと震わせた。それは正しく歓喜だった。
     ──そうだ、その目だ。
     ありふれた生温い眼差しでは、流川はもう満足できない。殺気の隠し方を忘れた「本物」が欲しい。流川の全身に、その情熱で消えない火傷の痕を残そうとする唯一の存在。高みを目指すための冷静さと、全てを手に入れるための血気を携えて、桜木は今、流川の前に立っている。流川以外、他は何も目に入らないのだと雄弁に語る瞳を受け止めて、流川は、桜木だけに分かるように目配せする。
     ──もっと来い。来れるもんなら。
     桜木は目を見張り、流川の真意を反芻するうちに数度瞬きをした。次に流川の爪先から頭の頂まで、痕を残す箇所を吟味するように時間をかけて視線を這わせて、そうして最後に、唇の端を歪めて笑った。
     その瞬間から、爛々と光る真夏の太陽は、終生流川だけのものになった。
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    QQaL5FoqTa

    DONE花流(大人)です。流川が花道にめろめろな話です。
    2人は学生の頃に付き合い初めて数年後プロになっているという設定です。事後表現があります。
    タイトル: alkalism 様
    陽が睡るただひとつの場所 伏せられた長い睫毛が羽のように震えて、重そうな瞼がゆっくりと持ち上がる。ぼんやりとした視界に抗うように数度瞬きをする、そこにいつものシャープさは無い。心地良い眠りから目覚めた流川は、まだ微睡の中を揺蕩うような感覚にそのまま身を委ねようとして、しかしそこで己の体の自由が効かないことに気付く。唯一動かせる首を傾けると、案の定そこには愛しい恋人の姿があった。
    (……桜木)
     声に出さずに名を呼んで、それだけで流川の胸の内には温かな感情が満ちていく。
     昨晩は久しぶりに二人のオフが重なるからと、お互い十分に期待して迎えた夜だった。触れ合える喜びと愛しさを隠すなんてできなくて、恥も外聞も捨てて、時間さえ忘れて夢中になった。桜木に触れて、触れられると、そこから火を付けられたように全身が熱く疼いて、どうしようも無く必死に求めてしまう。そしてそれは桜木も同じなのだと、自分を組み敷く男の目を見る度に、流川は歓喜で身を震わせた。二人の関係がチームメイトから恋人へ変化してもう長いこと経つのに、今だに熱の宥め方が分からない。もうずっと、覚えたてのような恋をしている。
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    QQaL5FoqTa

    DONE花道にプロポーズしたい流川が彩子さんに相談する話です。
    6/30ジュンブラの無配でした。当日頒布した新刊「花流結婚ネタ呟きまとめ」に収録されているネタを膨らませて書いたものです。

    タイトル:icca様
    イラスト:てんぱる様
    愛を込めて、なんてね「桜木にプロポーズしようと思ってるんスけど」
     掴みどころがないとよく言われるけれど、その瞳の真っ直ぐさだけは昔から変わらないのよねと、テーブルを挟んで向き合う後輩の顔を見詰め返しながら彩子は小さく微笑んだ。
     シーズンオフで一時帰国している流川から彩子へ個別に連絡があったのはつい数日前のことだ。互いの連絡先を把握してはいるものの、テレビやネットで流川の活躍ぶりはよく目にしているし、何かあれば人づてに彩子の耳にも入るだろうから、そうでない限りは息災なのだろうと、彩子からわざわざメッセージを送ることは滅多にない。流川から稀に連絡があるとすれば、もっぱら恋人の──桜木花道の話と相場が決まっていた。やれ桜木と喧嘩をしただのやれ桜木が落ち込んでいるだのと、流川なりに対処法を間違いたくないという思いが少なからず芽生えた時に、短く説明の足りない文章が彩子に届いた。その度、「解決したいならもっと詳細を教えなさいよ」と文句を言いながら、喧嘩なんて日常茶飯事のくせに、わざわざSOSを出してくるなんて謝りたい何かがあったのだろうとか、意地を張らずに励ましたいという自分の思いに素直になればいいのにとか、彩子は流川の気持ちを巧みに汲みながら発破をかけてやるのだった。
    1955

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    最高のバレンタイン 恋人がいると公言していようが、流川のバレンタインは盛況だった。本人はむっつりと面白くなさを前面に出して靴箱に入れられているチョコレートをスポーツバッグに詰めている。朝練を終え、いつもなら教室に上がる時には素通りする玄関で、中に入れられたプレゼントのせいで閉まらないロッカーから中身が落ちてくる前に片づけを始める流川を待つために、桜木も玄関に立っていた。色も形も様々なチョコレートの箱を、流川は、もう何度もこういうことをしてきたと分かる手つきでバッグへ放り込む。去年の秋の終わりからつき合い始めた男の横顔を桜木は見やった。桜木から告白してつき合うようになって、いいけど、と交際を了承したものの、果たしてこいつはバスケ以外の交流はできるのかと危ぶんだ桜木の予想に反して、一緒に登下校したいと言ってみれば頷いてくれたり、帰り道でまだ別れたくねーと呟かれたり、バスケ同様、流川は恋人としても、最高で、流川と恋人になってからというもの、桜木の心はぎゅんぎゅんと甘く満たされている。廊下の奥や背後の階段の上から、朝練の最中にチョコレートを入れたのだろう生徒たちの忍び笑いや囁き声が聞こえてきて、ぐるりと首を捻って視線を巡らせる桜木の足元で、流川がため息をつきながら、スポーツバッグから紙袋を取り出した。最初からバッグじゃなくてそっちに入れりゃよかったんじゃねぇの。流川の杜撰さやものぐさに対して呆れたが、口には出さなかった。
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    タオル 自分の洗濯物を片づけるついでに、流川のシャツや下着類もしまってやろうと棚の引き出しを開けようとすればがたがたと引っかかる。ふぬっと強引に開けてやった。中の衣服は雑然としていて、これが開けにくかった原因かと、桜木は呆れる。
    「あいつはよぉ…」
     バスケ以外はずぼらなところがある男の引き出しの中身を、仕方がないなと整理してやることにした。ここのところ、遠征や取材で忙しかったのを知っている。甘やかしているな、と思いながら、それでも普段の生活で、不得手ながら家事に勤しむ姿に接しているので、まあいいか、と畳み直し、きれいに詰め始めた。
    「ぬ…?」
     引き出しの奥に古びたタオルが入れられている。見覚えのある薄れた色合いや洗濯を重ねて薄くなってしまった生地の具合に、目を瞬かせた。それは、桜木の親が桜木が生まれる前に赤ん坊の肌かけにと桜木のために買ったもので、赤ん坊の時分から、幼稚園、小学校、中学校と育つ中、ずっと桜木の手元にあったタオルである。おしゃぶりの代わりにタオルの角をよく吸っていたと言われたり、そのタオルがなければ、昼でも夜でも寝られないと泣き喚いたり…自身の記憶に残っているもの、いないもの、合わせても思い出がたくさん刻まれている桜木の大事なタオルだった。小学校を卒業する頃にはもう肌かけにはしておらず、代わりに枕カバーとして使っていたものの、高校入学を翌日に控えた夜、中学校での最後の失恋から立ち直れなくて、可愛い恋人なんてこの先現れないんじゃないか、もしいるなら顔が見てみたい、好きになった相手とつき合いたい…と、布団に入って枕を、大事なタオルを、べそべそと涙で濡らしていれば、視界の端で模様がひとつ、すっかり消えて元々のタオル地の色が露わになっていることに気づき、束の間失恋の辛さも忘れて、桜木は起き上がると慌ててタオルを確認する。白いタオルに淵をぼやかせた青空と、元気よく飛び跳ねているキツネたちが描かれているはずだった。これまでの洗濯で全体的に色が薄くなってきたとは言え、一匹のキツネが、まるまる消えてしまったなんてことはない。初めての事態に、これ以上使って残っているキツネたちも褪せて見えなくなってしまうのは嫌だと、桜木はその夜から、タオルを使わなくなった。畳んで大事に取っておく。しばらくは長年使っていたタオルが手元にないことが寂しかったが、高校生活が始まれば、バスケに出会
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