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    ニウカ

    @nnnnii93

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    墓場鬼水
    起きない水木を不本意で起こす話

    別名:義息解釈違い強火否定派の水木

    #墓場
    cemetery

    寝覚めが悪い 最近夢見が悪い、と鬱陶しそうにこぼした水木は、その日の夜から眠り続けている。
     薄い呼吸を繰り返し寝返りもせず寝床に張り付いている姿は、さながら死人も同然だ。恐らく夢食いの類。腹が減った彼らは対象が起きないよう、うんと幸せな夢を見せてその中に籠るのだ。とはいえ、せいぜい二、三日の眠りで大概は目を覚ます。もう一週間も眠ったままなのはさすがに異常といえるだろう。
     水木の不在は鬼太郎にとってなんら問題はないが、このまま然るべきところへ金が払えなくなるのは大変良くない。生活費と家賃をきちんと納めるのがこの男の数少ない役目である。仕方がないのでそろそろ起こしてやろう。鬼太郎は襖を開け、ぴくりとも動かない青白い顔を叩いた。
    「ネエ。このままじゃ餓死しますよ」
     無反応。コリャ相当具合のイイ夢とみた。一人だけ呑気に横たわり、金を浴びるだか女をはべらすだか、富の限りを尽くした妄想に浸るなんぞ腹が立つ。今度は恨みの念を込めて強めに二、三発腹へ入れてやるが、水木は「うぐ……」と唸るだけだ。まったく贅沢者め。わざわざ手を貸してやってるというのに。
     どうしたものか、と考える。夢から気を逸らすには強烈な衝撃が必要なのだ。脳みそを強制的に覚醒させるような何か。水木が心から驚くものとは……。ふと、妙案がぱちんと弾けて頭に滑り込んでくる。自分から男に近づくのは少々躊躇いがあるものの、最も効果的な方法はこれしかない。鬼太郎は身を屈めて水木の耳を引っ張った。こほん、と声を整えて高く喉を鳴らす。
    「オジサン。実のところぼくはね、あなたと本当の家族になりたかった」
     一瞬でグワ、と目を開けた水木は一切の瞬きをしないまま天井を見上げていた。鬼太郎はふん、と鼻を鳴らして得意げにいう。
    「どうです? 清々しい目覚めでしょう」
    「いや」
     すぐさま強い否定の言葉が飛ぶ。「なにも覚えてないが……」と、無造作に伸びた髭を摩りながらなんとも渋い顔をした。
    「とにかく虫唾が走ったよ」
     最悪だ。だってあまりにも同感だもの。それでも、意図しない回答の内容に不満を感じ「ああそう。じゃあ次に寝込むときは、しっかり金の場所を吐いてからドウゾ」と口答えすると、水木は寝起き特有の掠れた声で「ハハ、隠し場所が分からなかったのか?」と小さく笑うばかり。それ以上は口を開いても負ける気がして黙って睨みつけた。水木はどこ吹く風で立ち上がり、高く昇る太陽を確認して「そろそろ昼飯にしよう」と呼びかける。呑気に大欠伸をしながら。

     こんな仕打ち、高級寿司くらい奢ってくれないと割に合わないンですが。なんて起こし甲斐のない非情な男。
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