美しい男「恋をした。そうしたらこのザマさ。自分でも驚いた」
恋をした刀剣男士には錆が生えるのだという。そんな噂話を聞いたことがある。噂話が本当だとわかったのは鶴丸の身体に錆が浮かんでからだった。
移るから触らないほうがいいぞと忠告され、伸ばした手を止めた。
誰に、と問う。
それは内緒さ、と返される。その笑みを浮かべる顔にも錆が生え、引き攣れ、ひどく笑いにくそうであった。
錆が全身を回れば折れてしまうそうだ。それでも鶴丸は錆をどうにかしようとは考えていないようだった。錆を落としたほうがいいのではないかという進言も聞き入れない。錆を落とすということはその恋心を捨てろということでもある。鶴丸はそれを望まないようであった。
落としたところで、また生まれてしまうよ。きみにはまだわからないさ。なってみなければな。
まるで子供を見るかのように目を細めて笑う。
なあ、きみ。俺のことを醜いと思うかい。
正直に答えた。
錆は醜いが、恋をする姿は美しい。悔しいことに。
鶴丸はその答えに今度こそ声をあげて笑った。
きみがそんなだから、俺は。
鶴丸はその先を言わなかった。喉まで生えた錆が、彼の声を奪ったのだと気付いたのはしばらくしてからのことだった。
それでも変わらず、恋する鶴丸は美しい。