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    美晴🌸

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    大倶利伽羅の無自覚な体質の話

    ##くりつる
    ##本丸軸なふたりの話

    遣らずの雨 夜、大倶利伽羅の部屋から自室へ戻るとき、決まっていつも雨だと気づいたのはいつのことだっただろう。おかげで廊下では誰とも出くわさないし、足音を忍ばせる必要もない。雨は一晩中降るだろうが、おそらく明日には止んでいる。勢いは強くなく、穏やかに雨粒が屋根を叩いている。雨音を聞きながら、鶴丸は冷え切った廊下を進む。くしゃみが出そうになり、手で押さえて耐えた。先ほどまでの暖かさが恋しく感じ、すぐに馬鹿馬鹿しくなって鼻で笑う。そこから抜け出してきたのは自分の意思だ。
     翌朝、遅めに起きると短刀たちが廊下でてるてる坊主を吊るしているのを見た。話を聞いてみると、どうやら明日は天気が良ければ兄弟でピクニックをする予定とのことである。昨夜は天気が崩れたので心配しているのだろう。鶴丸もてるてる坊主をくくりつけるのを手伝ってやった。それぞれに顔が描かれているのが実に味がある。つん、と指先で吊したばかりのてるてる坊主を揺らした。
     広間へ行くと、すでに大倶利伽羅が食事をしているところだった。遠慮なくその隣に座る。
     さっき短刀たちがてるてる坊主を吊るしているのを見たぜ。明日はぴくにっく、というやつをするそうだ。晴れるといいな。
     そうか。
     愛想のない返事である。鶴丸は気にせず、白身魚をほぐした。
     翌朝、てるてる坊主の甲斐もあってか見事な快晴だった。鶴丸は手を振って短刀たちを見送った。

     この本丸の大倶利伽羅は天候を操る力がある。
     本人も無自覚なのだが、彼が晴れを願えば晴れるし、雨を願えば雨が降る。昨日鶴丸がピクニックの話をしたから彼も天候を気にしていたのだろう。今日はちゃんと晴れたようだ。優しくて良い子なのだ。もちろん、彼が無自覚である以上、頭を撫でて褒めてやることなどできはしないのだが。この不思議な力が龍に由来するものかは不明だが、今のところ鶴丸だけが本人も知らない秘密を知っていた。
     今夜、大倶利伽羅の部屋へ行ってみようと思った。帰る時にまた雨が降るだろう。寡黙な本人の代わりに主張する可愛らしい遣らずの雨を、鶴丸は愛しているのだった。


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    silver02cat

    DONEくりつる6日間チャレンジ2日目だよ〜〜〜〜〜!!
    ポイピク小説対応したの知らんかった〜〜〜〜〜!!
    切望傍らに膝をついた大倶利伽羅の指先が、鶴丸の髪の一房に触れた。

    「…………つる、」

    ほんの少し甘さを滲ませながら、呼ばれる名前。
    はつり、と瞬きをひとつ。 

    「…………ん、」

    静かに頷いた鶴丸を見て、大倶利伽羅は満足そうに薄く笑うと、背を向けて行ってしまった。じんわりと耳の縁が熱を持って、それから、きゅう、と、膝の上に置いたままの両手を握り締める。ああ、それならば、明日の午前の当番は誰かに代わってもらわなくては、と。鶴丸も立ち上がって、その場を後にする。

    髪を一房。それから、つる、と呼ぶ一声。
    それが、大倶利伽羅からの誘いの合図だった。

    あんまりにも直接的に、抱きたい、などとのたまう男に、もう少し風情がある誘い方はないのか、と、照れ隠し半分に反抗したのが最初のきっかけだった気がする。その日の夜、布団の上で向き合った大倶利伽羅が、髪の一房をとって、そこに口付けて、つる、と、随分とまあ切ない声で呼ぶものだから、完敗したのだ。まだまだ青さの滲むところは多くとも、その吸収率には目を見張るものがある。少なくとも、鶴丸は大倶利伽羅に対して、そんな印象を抱いていた。いやまさか、恋愛ごとに関してまで、そうだとは思ってもみなかったのだけれど。かわいいかわいい年下の男は、その日はもう本当に好き勝手にさせてやったものだから、味を占めたらしく。それから彼が誘いをかけてくるときは、必ずその合図を。まるで、儀式でもあるかのようにするようになった。
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