幸福な朝 珍しく二人の休日が重なった朝のことだった。向かいに座るセンチネルだった者の皿にはサラダと一枚のベーコンが残されている。完食していないというのに、彼は理由をつけては行儀悪く席を立った。
「腹いっぱいなのか」
「いいえ」
センチネルは素直に返事をする。
「嫌いだから残したのか」
「いいえ」
たったこれだけの返事を、彼は歌うように言った。
「ならば全て食ってから席を立ちなさい」
私が窘めると素直に席へとついた。
彼は普段、他者から命令されることを嫌う。私は歳も上だし、今生での立場も上なので歯向かわれることは滅多にないが、従順なふりをした彼でも時々露骨な嫌悪を顔に出すので、私が把握している以上の豊かな感性を抱えているのだろうと伺い知ることができた。
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