「ねぇ、二人で暮らそうか」
浮奇と恋人になって、もう数年経つ。
正確には色々有って一度別れてるから、そこでリセットするなら一年未満だけど…まあ直ぐ復縁したし、ノーカウントでいいでしょ。
それは置いといて。少し前から、二人で同じ家に帰りたいと思っていた。「いらっしゃい」でも「お邪魔します」でもなくて、「おかえり」と「ただいま」を言い合いたい。
何気ない感じを装って口にした言葉はいつもより小さくて、自分でも分かる程に緊張していた。格好もつかないし、何とも情けない。恥ずかしくなってつい俯いていく顔を、首を傾げる様にして下から浮奇の美しい顏が覗き込んできた。
「いいよ。どこに住もうか」
「……いい、の?…ほ、ほんとに?」
「ふふ、何その反応。自分から言い出したのに。…俺ね、お城に住みたいなぁ」
「え、お城!?」
思わぬリクエストに目を見張ると、それを見た浮奇が可笑しそうに肩を震わせ笑う。
「お城…お城かぁ…、…私はちょっと嫌、かなぁ…」
「どうして?素敵じゃない?」
「だって、浮奇に今すぐ会いたい!会わなきゃ死んじゃう!って時に、広いお城の中を探し回らなきゃいけないでしょ?すぐ会えないのはちょっと困るよ」
わざと真面目な顔をして深刻な問題の様に理由を口にすれば、一緒きょとんとした浮奇の顔が、じわじわと幸福が滲むように破顔していく。
かわいい、と思わず口から出た言葉に、白く艶やかな頬がふんわりと色付く。私の恋人本当に綺麗だし可愛過ぎない?
「ふふ、そっか。スハは俺に会いたくてたまらなくて、死にそうになっちゃうことがあるんだ?…仕方ないから、お城は諦めてあげる」
「そもそもお城は買えないけどね。…会いたい、ちゅーしたい、って時にすぐ見つけられる程度で許してください」
「いいよ。俺もいつもスハの事を感じられる方がいいから」