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    setsuen98

    @setsuen98

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    setsuen98

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    🔮の隣を歩く🔗の胸中。
    前作の対になるものなので、そっちを先に見ていただくと分かりやすいです。

    #violisko

     浮奇の隣を歩く時、ふとした時に「ああ…悔しい」と思うことがある。

     二人で出掛ける時、浮奇は決まって俺の腕に触れる。それは歩き始めて直ぐのこともあれば、少し間を置くこともあって、いつだろうかと密かに頃合を見計らう。
     マニキュアで彩られた指先がこちらの反応を窺うように触れてくると、何気無いフリをして腕を少し浮かせてやる。それを合図に猫のしっぽのようにするりとしなやかに絡みついてくる腕を甘受し、満足そうに服越しの俺の腕を撫でる浮奇を横目に確かめつつ、気付かれない程度の緩やかさで歩調をもう少しゆったりとしたものへと変えていく。そうすると僅かに地面を擦るような俺のスニーカーが奏でる足音にリズミカルなヒールの音が重なり、さらにそこに浮奇のハミングが乗り、心地好く俺の心を弾ませる音楽に変わる。

     いつまでも聴いていたくなるような二人で奏でる音楽は、赤いライトによって止められてしまう。意味は無いと分かっていながら思わず不粋な信号機を睨むように見上げるも、そんな想いを知ってか知らずか優しく宥めるように寄り添う華奢な肢体と俺を呼ぶ甘い声にあっという間に意識が移り、どんな顔で名前を呼んでくれているのかとそちらを見ると思わぬ表情に眉根が寄るのを自覚した。
     どうしてそんな、寂しそうな顔をしているの。…隣にいるのが、彼じゃないから?なんて問い詰めそうになる言葉を飲み込んで僅かに首を傾げどうかしたのかと問いを示せば、ふわふわと髪を揺らしなんでもないと誤魔化されてしまう。…浮奇の事を誰よりも理解している彼なら、今の浮奇の胸中を見透かせたんだろうか、なんて。

    「浮奇」

     囁くように名前を呼べば、大好きな瞳がこちらを向く。

    「ねぇ、浮奇」

     もう一度名前を呼べば、真似しないでよ、とくすくす笑う。

    「真似じゃないよ。呼びたかったから、呼んだだけ」

     名前を呼んで見つめるだけで、浮奇が考えている事が文字になって表れでもしたらいいのに、なんてくだらない事を願いながら、全てを隠して笑って見せる。それに返されるのは彼に向けるような力の抜けたふんわりとした柔らかく甘い笑顔じゃなくて、隙の無い「完璧で美しい笑み」であることに喉奥が締め付けられるような感覚が襲い、ぐぅ、と低く喉が鳴る。

     こんなに大切に寄り添ったって、いつか浮奇は何の未練もなく、振り返る事すらなく彼の元へ行ってしまうのだろうと思うと、今すぐしなやかな身体を抱き上げ駆け出すことができないように捕らえ、行かないでと縋ってしまいたくなる。だけど、そんなどうしようも無く見苦しくて情けない姿は見せられないから、少しでも俺の匂いや体温を残そうとそっと身を寄せるのが精一杯だった。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
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    setsuen98

    MOURNING🦁👟みたいな何か。付き合ってません。
     ほぼ満席状態の店内。二人掛けのテーブルにルカと向かい合って座ってから、なんとも言えない無言の時間が過ぎていく。と言っても実際には大した時間は経っていないけど、黙り込んだまま相手が口火を切るのをただ待つ時間は何倍にも長く感じられる。だからと言って、いつもの快活とした姿とは異なり神妙な顔でテーブルを見つめるルカに「話って何?」なんて無遠慮に本題へ切り込むことなんて出来なくて、手持ち無沙汰にカップに口をつけブラックコーヒーをちびちびと啜るしか出来ず、日差しが降り注ぐ外をいい天気だなぁ…なんて現実逃避まがいに眺めていた。
     「シュウに相談したいことがある」と改まって連絡がきた時は、一体何事かと身構えてしまった。まさかルカの身に何か深刻な問題でも起きているのかと心配になり即座に了承の返信を打てば、カフェでお茶でもしながら聞いて欲しいとの思いのほかゆったりとした回答に、勝手な杞憂だったのかと胸を撫で下ろしたのが数日前のこと。ただ実際に顔を合わせてみるとこんな風に一切読めない様子で、大きな問題でないことを願う最中、突然ルカが顔を上げ僕の方を見つめたかと思えば、また直ぐに視線を落とし何度か口をモゴモゴとさせてようやく口を開いた。
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