.ウロボロスとクワイヤは犬猿の仲だ。
それは彼らが所属する組織の中では周知の事実であった。
錬金術を究めるべく日夜研究に没頭するウロボロスと、それを多方面からサポートする代わりに利潤を受け取るクワイヤ。
関係性の上では互いに協力を結んでいるにも関わらず、ひとたび顔を合わせれば途端に飛び交う嫌味や皮肉。果ては口論にまで発展し、第三者の介入によってでなければ終わることのない言い争い。
ある時は教団の建物内にある通路で。またある時はウロボロスの使う地下の実験場で。更にまたある時は会議室の入口で。
「ありゃもう名物みたいなもんだな。なに、見慣れりゃ猫の喧嘩みたいなものさ」
そんなことを言ったのは、彼らと並んで科学技術派のリーダーである電解と名乗る男だったか。
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