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    chaldea_uko

    @chaldea_uko

    伊ぐだ♀のちょっとすけべとか上げます
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    chaldea_uko

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    【甘々】
    伊織に英霊博装が支給された世界線
    ※重度の幻覚
    ※博装の装いは武蔵ちゃんのやつを男向けにしたようなイメージ
    ※伊織がいるということは武蔵ちゃんがいないと解釈しているデアなので、伊織がセイバーウォーズパビリオンに配置される想定

    #伊ぐだ
    #鯖ぐだ子
    #鯖ぐだ

     近頃のカルデアを包む空気は妙にそわそわとしている。廊下ですれ違うサーヴァントの中には普段とは異なる格好をした者もおり、その者たちは皆一様に満面の笑みをたたえていた。
     そうでない者たちも何やら忙しなく過ごしているようで、例えるならば祭りの前の高揚感に似た、不思議な空気に満ちている。

    「マシュ殿、これは何かの『いべんと』か?」

     食堂で一緒になったマシュに問うてみると、彼女は瞳を輝かせながら答えてくれた。

    「毎年この時期に行われる一大イベントです!こうして新たな一年を重ねられたことをカルデアの皆さんと一緒にお祝いする……お祭りのようなものですね!」
    「やはり皆が浮かれているのはそう云うことなのだな」
    「はい!今年はこれまで旅した特異点をシミュレーターで再現して、観光気分で楽しむそうですよ!」

     マシュの弾むような声を聞きつつ食堂に集っているサーヴァントたちを眺めていると、白く長い髪を揺らしながら厨房に食器を戻している後ろ姿が見えた。見慣れた姿ではあるのだが、見慣れぬ格好をしている。

    「あれは正雪、なのか……?」

     俺の言の葉に反応したマシュが、ああ、と口を開いた。

    「正雪さんは今回ハワトリアの案内係を担当されるので、あの様な格好をされているんです」
    「……成る程」
    「あっ、大変失礼しました!実は、伊織さんも呼ばれているのです!技術部の皆さんがお手伝いをお願いしたいとのことで……」
    「……俺が?」

     思わぬ話に間の抜けた声を出してしまったが、此度の祭りに於いてはああして正雪も盛り上げ役を仰せつかっているのだ。ならば、同じく新参者の俺が指名されることもあるのだろう。

    「解った。食事を終え次第向かおう」

     一体どう云った用向きか。手早く食事を摂った俺は、その足で管制室へと向かったのだった。



     管制室にはダ・ヴィンチとミス・クレーンがいた。俺の姿を認めたダ・ヴィンチが、「待っていたよ」と手招きする。

    「祭りへの助力が要ると聞いて来た」
    「話が早くて助かるよ!今年は一部のサーヴァントにそれぞれの特異点に沿った衣装を着て盛り上げてもらうことにしててね!伊織君には、これを着てセイバーウォーズパビリオンの案内役をしてほしい」

     まじないのような言の葉に頭が痛くなりかけたが、要は正雪と同じように祭りに集うサーヴァントたちを案内あないする役目を仰せつかったのだろう、と理解する。『セイバー』というのは聞き取れたので、そのクラスである俺が選ばれたと云うことか。

    「解った。俺に出来ることならば何でもしよう」

     その返答を聞いたダ・ヴィンチがミス・クレーンを見遣ると、彼女の手には服一式と思われるものがあった。

    「伊織さんのスリーサイズは既に承知しておりますので、当日のお衣装は準備ができております」
     
     云われてみれば、以前に立香と新宿にレイシフトした際に洋服を拵えて貰ったのだった。
     ふわり、と手渡されたのは全体的に黒い服だ。

    「魔力で編んだ簡易霊衣です。ここではなんですので……ご自身の部屋に戻られてから試してみてくださいまし」
    「解った。話はこれで終いだろうか」

     俺の問いに答えたのはダ・ヴィンチだ。

    「うん、これでおしまい。一応部屋に戻ったらすぐに着て確かめておくれよ。あと……」

     不自然に言の葉を切った彼女の口元は少し緩んでいる。俺は嫌な予感がしつつ、無言で続きを促した。

    「その姿を真っ先に見せに行った方がいい人がいるよね?」

     万能の天才は、好奇心を隠そうともしない悪戯っぽい目をしながら微笑んでいた。

    (……成る程。いつも立香はこの様にして揶揄われているのだな)

     立香がこれまで幾度も「ダ・ヴィンチちゃんに揶揄われる……」と頭を抱えているのを見てきた。そういった時のダ・ヴィンチはまさにこの様な顔をしているのだろう。あの整った顔でこちらを揶揄い、試す様な笑みを溢されると、なんとも落ち着かない。

     溜め息は吐かぬように、「そうだな」とだけ答えれば、ダ・ヴィンチはさらに『うぃんく』をしてきた。

    「……解った。マスターには必ず見せに行くと約束しよう」

     「それは良かった!」と笑い合う二人に曖昧に答えて、俺は長屋へと戻ったのだった。



     夜も更けた頃。俺は立香の部屋の前に来ていた。

     肝心の衣装とやらは、下半身は黒く伸縮性のある布でぴたりと覆われているのだが、上半身は肩から先が向こうが透けて見えるような奇妙な布で覆われており、動いて擦れるときゅっと音がするようなモノだった。そして『べると』が多い。
     真っ先に「戦うには不向きだな」と思いつつ、祭りであれば帯刀する必要も死合う必要もないのだろうし、気にすることでもないか、と考え直す。

     立香の部屋に来る道中で誰かに出会でくわさないかと危惧したが、今宵のカルデアは祭りの前の静けさなのかひっそりとしており、幸いにも誰とも会わずに済んだ。
     恐らくこの時間であれば今日のマイルーム担当のサーヴァントも帰っており、彼女もまだ起きているはずだ。

     俺はひとつ息を吸い込んでから、静かに戸を叩いた。硬く低い音が夜に吸い込まれた後、中からくぐもった声が聞こえてくる。

    「は〜い」
    「マスター、俺だ。少しいいか?」
    「開いてるからどうぞ〜」

     許しを得て中へと入る。彼女はレポート作成の最中なのか、こちらに背を向けた状態で机に向かっていた。

    「遅くにすまない」
    「ううん、何かあった?」

     云いながら彼女は顔を上げて、椅子ごとこちらに振り向いた。

    「えっ!?」

     がたがたと大きな音を立てたのは、つい先程まで立香が座っていた椅子だ。今は横向きに倒れている。

    「伊織、その格好は……?」

     勢いよく立ち上がったかと思えばふらふらと覚束ない足取りでこちらに向かってくる。あまりにも危なっかしいので、こちらから彼女の元まで歩いていった。

    「此度のイベントで案内役を仰せつかり、その為の霊衣を貰ったのだ。立香にはいの一番に見せねばと思ってな」

     彼女は俺の肩や腕の辺りをぺたぺたと触りながら、口を半開きにして服と俺の顔とを交互に見ている。その様が可笑しくて、俺は少しだけ彼女を困らせたくなってしまった。これではダ・ヴィンチと変わらぬな、と思いつつ、屈んで彼女の眼を覗き込む。

    「……で、どうなのだ?」
    「あ……え、と……」

     激しく眼を泳がせている彼女は、何故か耳まで真っ赤に染めている。

    「立香。おまえが俺のこの姿を見てどの様に思っているのか、きちんと言の葉にして教えてくれ」

     小さな生き物の様にぷるぷると震えている肩にそっと手を置きながら待つと、ややあってから彼女が口を開いた。

    「すごく似合ってる。すごく素敵。すごくカッコいい。どうしよう、あまりに良すぎて惚れ直してる」

     ……今度は俺が赤面する番だった。

    「待て待て待て、一気に云い過ぎだ。流石に面映い」
    「だって、本当のことだもん!」

     どうやらうっかり揶揄いすぎたらしい。それから暫くの間、立香は堰を切ったように俺を褒める言の葉を並べ続けたのだった。



    「もう気は済んだか?」

     倒れたままだった椅子を戻し、少しは落ち着いた様子の彼女を座らせてやる。

    「ねえ、本当に素敵だよ、伊織」
    「解った解った」
    「あ!ちょっと待って!」

     たった今座ったばかりだと云うのに再び勢い良く立ち上がってしまった立香に淡く苦笑する。

    「今度は何だ?」
    「ゲオル先生のところに行かなきゃ……カメラを借りて、伊織の写真を……」
    「おい、立香……!」

     うわごとのように云いながら部屋を出て行こうとする彼女の腕を少し強く引いて、その身体を腕の中に掻き抱いた。

    「斯様な夜更けに他の英霊の処に行こうとするんじゃない」

     耳元で云えば、立香は「ごめん、舞いあがっちゃった」としおらしくなる。

    「解れば良い。ゲオルギウス殿の処には明日共に行こう」
    「えっ、一緒に行ってくれるの!?じゃあ二人で撮ってもらおうよ!うわっ、何着て行こうかな!」

     そのまま礼装が掛けられた棚を見に行きそうな勢いだったので、俺は彼女を抱き締める腕に力を込めた。

    「それも明日で良い。少し落ち着いてくれ」
    「そ、か……ごめん。やっぱりまだ舞いあがってるみたい。えへへ」

     ふ、と笑みが溢れてしまう。先程から立香の反応がいちいち可愛らしい。これまで見た事のない彼女を次々と見られて、心の裡では楽しんでいた。ダ・ヴィンチに揶揄われた甲斐があったと云うものだ。

    「ねえ、伊織。イベントが終わっても……お願いしたらまた着てくれる?本当に素敵だから、何度だって見たいの」

     潤んだ瞳で俺を見上げてくる恋人の願いを断る由などなく。

    「ああ。おまえが望むなら」

     短く応えて、その柔らかな唇に口付けた。
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