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    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

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    105@海自艦擬人化

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    3513+3818。フライングして書いた退役話が都合で没になったので…。(前半になるはずだった部分)

    #擬人化
    Humanization
    ##本編

    もう仕事らしい仕事は無くやることといえば掃除と身辺整理くらいのものだ。昼も済ませ、暇をもて余していたところへ腐れ縁の同僚が顔を覗かせた。基地内ならまだしも、今いる造船所側までわざわざ来るとは珍しい。ちょっとお邪魔するねとだけ言って、返事も待たずにさっさと入り込み、自身が椅子代わりにしていたベッドに迷わず腰を下ろした。
     遠慮が無いのはお互い様だし、どこでも構いはしないが隣は流石に少し鬱陶しい。しんとした室内では息づかいすら聞こえそうな距離だ。元々口数が多い奴ではないといえ、自ら足を運んでおいて黙り込むのも妙な話だ。しばらく、何事か考え込んでいる様子をチラリと横目で盗み見る。長い付き合いで機嫌の良し悪しや考えはなんとなく理解が及ぶと思っていたが、今日ばかりはさっぱり話が読めない。用があるならそのうち勝手に話すだろうと放置を決め込み、読みかけだった雑誌をぺらぺらと捲る。
    「しまゆき」
    随分と長く感じた静寂を裂いてようやく、ぽつりと呟かれた呼び掛けにんー?と生返事をする。目線は落としたまま続く言葉を待つ。
    「私は、この30年余りが結構好きだったみたいで。遠航行って、観艦式も出て。佐世保から呉に来てからも。なにかと一緒に過ごしてきて」
     楽しかった、と。そう淡々と紡がれた言葉に顔を上げた。どことなくさっぱりとした、穏やかな表情を向けている。しまは?と聞かれている様な気がした。悪くは無かったと思う。ただ、それを面と向かって言うには少し気恥ずかしくて、お前の顔は見飽きたなと茶化した。酷いなぁと言いながらもけらけらと楽しそうに笑う。それで良いのかと思いながら一緒になって笑った。
     先ほどまでのしんとした空気から一転し、どちらともなく堰を切ったように口を開く。ひとしきり思い出話に花を咲かせ、話し疲れた頃合いにちょうど終業のチャイムが響いた。もうそんな時間か。窓から空を覗くといつの間にかすっかり日が傾いていた。
     そろそろ戻るよと立ち上がったせとゆきを見送る。そういえば、とドアノブに手を掛けた背中に疑問を投げ掛けた。
    「なんでこっちまで来たわけ?」
    「基地の方は出入りも多いから、ここの方が静かで良いかなぁって。……もう、こんなにゆっくり話す機会は最後かもしれないし」
     まだ早いのにね。と振り返って見せた笑顔に掛ける言葉が見付かず、遠ざかっていく足音をただ聞いていた。
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    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
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    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
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