8月新刊サンプル的な物Da Serenissima...
青、という名前を付けてくれたのはどっちだったのだろう。母だったのかもしれない。
自分の目をよく見て、いつも褒めてくれるのだ。綺麗な青い目。愛する息子だと。
――本当は知っている。それ以外に褒めるところが無いからだ
出会いの庭
「アズール、そろそろ家から出てみない? 外はこんなに良い天気なのよ?」
ドアの向こうで母の声がした。心配そうな声だ。それでもアズールは、ベッドの上に膝を抱えて座り込んで、黙っていた。
「アズール、二人とも心配しているんだよ?」
おじさん、もとい、父になった人の声が母の次に聞こえてきて、部屋の扉をノックした。そんなの知っている。そうだからといって、部屋から出られるかといえば、出来たら苦労なんてしない。
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