さみしいにんぎょとさみしいにんげん ジェイドは一人で森の中を歩いていた。
――これはいわゆる迷ったというやつですね
冷静に、表情も変えずに彼はふむ、と立ち止まって考えた。森はそもそも整備された道があり、そこをずっと通ってきたはずなのだが……。
――さて、そういえば途中キノコを見付けてそちらに行ってしまったような? しかし、ちゃんと元の道に戻ってきたはずですが
遭難したとしか言えない状況だが、彼はあまり困ったという感情もなく、そのまま歩き続けていた。森の範囲についてはある程度把握してから入ったし、コンパスは今も正常な位置を指しているようだった。
詰まるところ、冷静なままであればいずれは変える事が出来るという事だ。食料もまだしっかりある。
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