咬魚は気まぐれに謎を追う「ピアス」
情緒のある人間であればその日の月夜に何かしらの物を感じ取っていたのだろう。
あいにくその場にはそんな情緒よりも優先する物事があり、その場に居る人間はそもそも月の美しさに大してこころを動かされるようなこともなかった。
「……で、これが?」
「ああ。言っていたやつだ」
二人の男が額を寄せ合い、後ろにはその仲間がそれぞれ待機して、辺りを警戒していた。
がさ、とノイズが混じるイヤホンに、彼は舌打ちして物陰からそっと様子を伺った。
くちゃ、とガムを噛みながら、ラフなジャケットに無骨なナイフと銃を持った青年は、ぼんやり月を見上げた。
――あー、めんどうくせーな
人数と武器を確認し、彼はゆらりと立ち上がった。ガサガサと入っていたノイズが一瞬クリアになる。
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