イブが残した果実2 どうして? どうしてこんなことに? 早足で歩いているのに、隣を並走しているひとは涼しい顔をしている。どうやら歩幅の問題で、私が精一杯足を忙しなく前へと出していても、彼にとっては長い足を少し大きく出すだけで埋められる程度の努力らしい。
グリムも関わりたくないと耳をイカのようにしてテッテッと四つ足で早く走っていると言うのに……
ちらっと隣を見るとニッコリと「たまたま方向が同じなんですよ。よかったら一緒に向かいません?」なんて白々しい。
はい無駄な努力おしまい。とほおの横で手を重ねているようにしか見えない。
「自分は……忘れ物を、したようなので」
「ああ! 奇遇ですね僕もあなたが先程いらっしゃった薬学室に用があるんです。さ、行きましょうか」
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