【Web再録】境界線 そこは監獄だった。
着なれない異国の衣服、見知らぬ風貌の人々、聞いたこともない言葉たち。誰一人、わたしを名前で呼びはしなかった。何を言われているか、何が起きているのかさえわからない中でも、侮蔑の眼差しだけは確かに感じ取れた。満足に眠ることもできず、いやにやわらかな寝台で無為に時を過ごすだけの夜が幾度も繰り返された。
ある朝だった。わたしはその部屋につけられた、とても小さな窓から外を見つめた。気味の悪いほど明るい日差しが目を焼いた。重い瞼を押し上げると、彼方遠くに、抜けるような青空が広がっていることに気が付いた。息の詰まる狭い部屋の棚に、いっぱいに本が詰まっているのに思い当たった。半身を起こし、立ち上がる。そこには確かに動く四肢と、何かを思う心があった。
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