痴話喧嘩は白鳥も食まない ――マヨイ先輩と喧嘩してしまった。
そう藍良が相談されたのは、ESビル屋上の空中庭園でのことだった。ALKALOID結成以降、なにかと利用している今や馴染み深いリラックススポットだ。
そこに来て、弁当を広げながらベンチの隣に腰掛ける一彩を藍良はそっと見た。
「ヒロくん、いったい何したの?」
「……僕がなにかした前提なんだね……」
「拗ねてる?」
「拗ねてはいないよ」
これは少々風向きがあやしいのでは、とイヤな予感がした。
そもそも一彩とマヨイの二人に『喧嘩』というワードの組み合わせがカオスだというのに。
一彩はそっと視線を落とした。彼が詰め合わせた色々のおかずが、弁当箱の中で食べられる番を大人しく待っていた。待ち時間がかかるかも。
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