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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    komaki_etc

    DOODLE漣タケ
    うかうか 電車で隣に座った人が、花束を持っていた。
     横を見なければ気づかないほどこぢんまりとした素朴な花束で、一輪、ひまわりだけが目を引くように鮮やかだった。
     隣の人はそれを嬉しそうに、大事そうに何度も抱え直すものだから、自然と目が引き寄せられてしまう。きっと、じっと動かない人であれば、花束を持っていたことにも気づかなかっただろう。
     花束は、職業柄、よく貰う。ドラマのクランクアップが主だ。ライブや舞台でもフラワースタンドを貰うが、持って帰れるものではない。手の中にすっぽりとおさまるサイズだと、家や事務所に飾れてささやかに嬉しくなる。
     花は、一過性の美しさだ。あっというまに枯れてしまうし、それは手入れを怠れば尚のこと早まる。綺麗にドライフラワーにできれば長く楽しめるのだろうけど、自分はそこまで器用ではない。そんな一瞬の美しさを、わざわざ俺のために贈ってくれる存在がいるということは、なんと嬉しいことだろうか。右隣のひまわりを見ながら、そんなことを思う。きっとこの花たちは、帰宅後、速やかに花瓶に生けられるのだろう。存分に愛されてから散るに違いない。儚い栄華。俺は自分の右手の甲を見た。
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    komaki_etc

    DOODLE舞握
    ハートマーク 俺の家には冷蔵庫がないから、夏に遊びに行くのは嫌だ、と言われた。だから俺たちはいつもカフェで待ち合わせをする。
     カフェオレとカフェラテの違いがよくわからないなんて話をどちらかがして、どちらかが解説するのを、なんど繰り返しただろう。メニューを見ながら思いつく話は限られてて、でもラテアートのサンプル写真はどの店でも違ってて、やっぱりこれにしようって二人して選んで。異なるハート柄が運ばれてきて、小さく乾杯した。
    「冷蔵庫、買わないのか?」
    「んー、ミスターやましたんち行けばいいし……」
    「それで事足りるんだもんなあ……」
     ははは、と笑いながら口元に泡の髭をつくるミスターあくのは、店内をくるりと見渡して「いい店だな」と呟いた。仄暗いオレンジ色で照らされた隠れ家的な室内はシックなジャズがかかっていて、きらきらとした音色に観葉植物が泳いでいる。カウンター内にはアンティークのカップや皿が一面に飾られていて、曳きたてのコーヒーの香りが広がっていた。うん、いい店だね、と頷いて、俺は自分の部屋のことを思い出す。毎日蒸し暑いから洗濯が億劫で、ミスターやましたのとこにつっこんできたけど、大丈夫かな。またあとでなんか言われるかな。
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