春陽の兆し SS―――ウィンターライブの決勝戦を終えた、数時間後。茨が考えたスケジュールに則って秀越学園寮の自室でベッドに横になっている凪砂は、じっと暗い天井を眺める時間を過ごしていた。
身体には疲労が溜まっているはずなのに、どうにも目が冴えてしまっていけない。今すぐ寝付くのは無理だと判断し、ストールを羽織って部屋を出た。
外はすっかり夜の帳が降りている。この時間に出歩くことはあまりないので、目に映るものも、耳が拾う音も、肌に触れる空気も、全てが新鮮だった。
(……星が綺麗だ)
見上げた空では無数の星々が瞬いている。つい数時間前の自分たちも、あんな風に輝いて見えていたのだろうか。そう在れたのなら良いなと、思う。
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