Bet on you④翌日。
業務開始より幾分前に更衣室を出てスタッフルームに通り掛かると、案の定シェールさんが身支度を完璧に終え所在なさげに入り口で立ち尽くしていた。俺はいつもギリギリに部屋を出るが律儀な彼女は常に10分前行動を心掛けている事を以前より把握済みだ。よく見ているだけだ。むしろ視界に入ってくるだけだ。断じてストーカーではない。こちらに気が付くと小さな頭をぺこりと下げ、そっと近付いてくる。
「コールさん・・・ごめんなさい。お世話になります。」
「いやいいって。俺も近くにいてもらった方が何かあった時に対処出来るから。」
申し訳なさそうに柳眉をハの字にして謝ってくる彼女に右手をひらひらと振って気にするなと伝え、スタッフルームに足を踏み入れた。
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