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    betsuno_nanika

    @betsuno_nanika

    ロクセリという鳴き声のやつです

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    betsuno_nanika

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    現パロロクセリちゃん。
    8/2がハニーでバニーでパンツの日と聞いて。
    そこにラキスケも追加しました。夏ですねえ。

    #ロクセリ
    non-humanPrimate

    オールドメイド「な、ん、で、お、れ、だ、け、15連勤なんだよ!!!」

    怒りを込めて振り下ろした俺の拳が金の紋様が美しい磨き込まれたマホガニー製のテーブルに炸裂し、オーナー室にその衝撃音が響き渡った。
    テーブルのその奥、嫌味ったらしい赤のベルベット地の豪奢な椅子に長い足を組んでテーブルに片肘を付きこちらを下から睨め付けてくる男には全く効果が無く、その紫炎を思わせる切れ長の目をすいと細める姿を見るに逆効果だったと知れる。

    ここはこの国でも有数の高級ホテルリゾート『ブラックジャック』内に存在するカジノ。そのオーナーであるセッツァー・ギャッビアーニより連勤に次ぐ連勤を命ぜられ、最後に提示された10日連続勤務を這う這うの体で終えたところに5日の追加と来たため、とうとう俺の堪忍袋の尾が切れた。オーナー相手にとんでもない態度だと頭の片隅の冷静な俺が喚いている。今日まで蓄積された疲労と睡眠不足で判断力と沸点が低くなっている自覚はあるが歯止めが効かない。客前に出れば完璧に取り繕う自信があるが、腐れ縁のこいつの前だと仮面が剥がれてしまったのは鈍った脳のせいで気の緩みや甘えが出てしまっているのだろう。ひとたびリゾート敷地内に入ってしまえば俺はこいつに「慇懃無礼で胸糞わりぃ」と言われる程に礼節を持って接している。
    まあ他の従業員の目も無いし許されるだろうと心の中で決めつけ脳内の声を無視する事にした。

    「しょうがねえだろ、あちらさんがお前を御指名なんだよ。」

    目の前の男は不機嫌を露わに懐からシガーケースを取り出しそう言った。
    国外から来た超が付くほど富裕層の団体客。その中でも壮年の女性方に俺は何故かいたく気に入られた。曰く「可愛いお顔のディーラーさん」。…そりゃご婦人方からしたら子供か孫くらいの年齢だろうが 25超えた男が可愛い、と言われて嬉しい訳がない。同世代のこいつと比べると幾らか童顔気味である自覚があるので尚更。俺が居ないと分かり易くがっかりして集団で引き上げるらしいので売上がガタ落ちとなっているらしく、その為無茶苦茶なシフトを組まされて今に至るのだ。ここ数日バックヤードでのあだ名は「マダムキラー」。こちらも全くもって嬉しくない。

    「後5日で帰国だとよ。それくらいやれんだろ?」

    葉巻の両端をシガーカッターで切りながらこちらをちらりとも見ずに目の前の男は言い放つ。

    「今日で5徹目なんだよ…マジで勘弁してくれ。」

    溜まった疲れを一緒に吐き出すように細く深い溜息をひとつ。そろそろ寝ないと本格的に身体に支障を来すと脳のアラートが点灯していた。
    シュッ、とシガー用マッチを擦る音が聞こえ、ちらりと視線をそちらへ遣ると、こちらの泣き言など最初から聞こえていないかのように口内へゆったりと煙を含み香りを堪能している傷の男が目に入った。

    「お前がタフな事は知ってんだよ。手先も接客も悪くねえ。」

    そう言うと紫煙を燻らしている反対の手でテーブルの上のカードを一枚ピン、と弾いて寄越した。
    訝しげにしている俺に男は顎をしゃくってみせる。どうやら捲れ、という事らしい。
    胡乱な眼差しを気怠げな男に向けながらカードを己に引き寄せた。

    「………。」

    捲った手元にはスペードのエース。ブラックジャック最強のカードだ。そうだ、俺は名実ともにこの豪華客船を模したリゾートのトップディーラーだ。言外に信頼している、と伝えられ思わず絆されかける。

    「ってそれとこれとは別だろ!」
    「チッ、バレたか。」

    再度吠え始めた俺にうるせえうるせえ早く持ち場に帰れと手のひらをヒラヒラと振られいなされる。
    ドアを乱暴に閉めた俺は、反対の手に持っていたカードを数秒見つめ、ピン、と中空に弾いた。
    くるくると美しい弧を描いたカードを二本の指でキャッチする。切り札を意味する黒のカード。

    「ま、やってやりますか。」

    胸にしまい、歩き出す。その音はオーナー室を訪れる時より幾分軽く廊下に響くのだった。



    オーナー室から辞した俺は自分の卓へ戻る前に身嗜みの確認をしようとバックヤードへと足を向ける。ディーラーは言わばカジノの顔だ。自分の一挙手一投足がホテル全体の評価に繋がる事もあるため外見と言動には常に気を配る必要があるのだ。
    オーナー室からバックヤードに続く廊下の角を曲がると、十数メートル程先に金糸が揺らめくのを目が捉えた。

    (あれはカクテルウェイトレスのシェールさんか。)

    今から出勤らしく、清潔感のあるペールブルーのセットアップにヒールのサンダル姿が涼しげだ。同じ時間帯の勤務と知り、現金だが心が沸き立ちモチベーションが上がるのを自覚した。カクテルウェイトレスとはフロア内の客に飲み物を提供する、ディーラーと並ぶカジノの花形職種である。その中でもシェールさんはうちの露出の多いうさぎ耳の付いた衣装を着こなすすらりとした長身と美しいボディライン、月の光を思わせる艶やかな長い髪で誰もが目を奪われる容姿をしている。意志の強そうな深い青の輝く瞳に見つめられ、珊瑚の唇で言葉を交わせば男女問わず出会う客全てを魅了する、正に高嶺の花と言えた。

    (すげー髪サラサラだよなあんな長いのに。)

    男は狩猟本能に基づき揺れる物に弱い、と何かの雑誌で読んだ事がある。確かに腰まである長い髪が歩く度にリズム良く左右に揺れる様子はずっと見ていたい様な心地にさせる。そう考えながら規則的な動きを眺めていたら急激に睡魔が襲ってきた。まずい。部屋に着いたらまずは冷たい水で顔を洗いたい、キンキンに冷えたブラックのアイスコーヒーが飲みたい、と酸素の足りない脳で今後の行動を組み立てながら泥の中を歩く様にずるずると進む。バックヤードに到着した俺は重い頭を重力に預け俯いたままドアを開けた。

    「えっ、」
    「ん?」

    野郎にしては高い、いや高すぎる上擦った声に訝しみ顔を上げると。
    先程まで俺の頭の中を占領していたリゾート内No. 1カクテルウェイトレスの姿がそこにはあった。セットアップの下を脱ごうと膝に衣類がわだかまった状態で。

    雪の様に白く淡く光る臀部がこちらを向いておりばっちり見えてしまった。肉付き良くまろみを帯び、張りとつやのあるそれは衣装に響かないように黒のTバックを着用しており、途轍もない破壊力でノーガードの俺の働いていない脳と心臓をぶん殴ってきた。なんという圧倒的暴力。
    最初こそ呆気に取られた表情だった彼女の頬が見る見る内に紅潮していく様を見ている内に冷静になった頭の一部が、錆び付いた脳で考え事をしていた所為でそのまま前を歩く彼女に着いて部屋に入ってしまったのだと答えを導き出した。どっと汗が噴き出した俺は謝罪の言葉を述べて急ぎ部屋を退出する事にする。


    「ほんと好きです付き合ってください。」



    違う!!全然違うじゃないか俺の脳!!先程の鮮烈な情景がとどめとなって俺の疲弊し切った思考回路は完全にシャットダウンしたらしい。
    ふるふると羞恥と怒気で震える彼女がこちらをキッと睨みつけ、ロッカーに入っていたゴールデンミシディアうさぎ像(先週彼女が表彰された際に貰っていたやつだ)を力一杯投げ付けてきた。常なら避けられたであろうそれがガコン!と小気味良い音がして額に直撃した事を知る。絶景を眺めながらそのまま俺の意識はブラックアウトしたのだった。




    後日、高嶺の花と俺が最高に楽しくデートしたのはまた別のお話。
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    webb11030989

    MOURNINGオペオムイベント『ロックのトレジャーハント』冒頭ムービーにセリスが出てこなかったってだけで書き散らかした、ロックにヤキモチ妬かせたいだけの妄想文。
    ストーリーでは今回のお相手まだ合流してなかったり、いろいろ雑なので即・供養。

    私の中ではオペオム世界は相変わらず頑張ってエドセリなんですが、それはそれとしてロクセリは別腹ということで😉
    トレジャーハントイベント裏 世の中には、いとも容易く他者のパーソナルスペースに入り込むのが赦されてしまう人がいるもので。

     たったいま、断りもなく右隣に腰を降ろした大柄な男もその一人。ちなみにその恋人(悲恋であったと聞いている)もまた同様だ。
    「よっ、隣いいか?」
    座ってから聞く……と思いながらも、先客であったセリスは、どうぞ、とにこやかに応じた。

     セリスはかれこれ一時間半ばかり、ぼんやりとこの見晴らしの良い丘で草むらに腰を降ろして、現実世界を限りなく精巧に模した非現実的世界を眺めていた。同じ世界の仲間たちは今日は出払っているが、新しい仲間たちにも目端の効く人が多い。そろそろ心配した誰かが様子を見にきてもおかしくはない頃だとは思っていた。ただ、その役割がこの人だったのはちょっと珍しいな、と興味深く感じたのだ。
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