■ 空の「 」 早乙女家のリビングでBGMのように落ち着いた恋愛映画が流れていた夜だった。
女性陣や早乙女博士が見つめる画面を横目に飽きてしまった元気ちゃんやリョウとトランプに興じた後(ムサシはミチルさんを落ち着かない様子でチラチラと伺いながら耐えていたが、結局我慢できずにソファの片隅で寝入っていた。ちっとも起きやしなかったから毛布だけ掛けて置いてきた)、寝付こうと向かう共同部屋への廊下で並んで歩く姿から流石にギョッとする言葉を耳にして足を止めた。
「そういや一目惚れ、なんて言葉は信じて無かったけどよ、お前を見た時の気持ちはそういうのに近かったのかもしれねえな」
今までも互いに恋愛なんて言葉からは程遠い生活をしていた俺達にはあの映画は縁の遠い世界の話だったかな、などと会話していた中でのそんな言葉は唐突にすぎた。
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