welcome「ねぇヤギヤマ、それやめてよ」
「それってなんだよ」
カズサの不機嫌な声に、振り向きもせず尋ね返したのを僕は何ひとつ悪いとは思っていない。
何故なら──
ほんの数分前に、今日も今日とてと慣れてしまった自分に少しの辟易をしつつ、それでも突然やってきたカズサを文句のひとつも言わず部屋に迎え入れたのは他でもないこの僕だからだ。
だというのに、当のカズサはどこに不満があるというのか。
「その体勢」
「あ?」
体勢、とは、僕のこの、ベッドにうつ伏せてスマホを見ているこの体勢か?
「僕が僕の部屋でどう寛ごうが勝手だろう」
今度も振り向かないまま答えると、次に聞こえたのは聞こえよがしの大仰な溜息。
それから──
ベッドの、軋む、僅かな音、と──
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