Honey Day　カーテン越しに感じる日差しにテスカトリポカは目を覚ました。
　部屋に残った空気にまだ少し夜の湿度を感じて、視線を落とすと胸にぴったりと寄り添うハニーブロンドが規則正しい寝息を立てていた。
　この男に対して可愛らしいという形容はテスカトリポカからすれば当たり前だったが、他人からするとそうでは無いらしい。
　まぁ、オレの彼氏は格好良く、綺麗で、その上可愛いの全部セットだからな、と平然と返したら変な顔してたが、とテスカトリポカは思いつつも、こんな愛らしい姿は他の誰にも見せてやるつもりはないので、訂正させてやることはない。
　ちゅっと音を立てて額に口付けると、長い睫毛が僅かに震えて、その瞼の下に隠れている紫色の瞳に自分を映したい衝動と、昨夜無理をさせた自覚があるので、少しの罪悪感が交差する。

[虎兎]あなたがくれたもの「これ、楓から」
　朝、いつもギリギリに出社してくる虎徹さんが、何故かアポロンメディア本社ビルの入口で僕を待っていて、可憐なピンクの封筒を差し出してきた。
「楓ちゃんから？」
　何だろう……と思いながら受け取ると、それがわかったのか呆れたような声で答えが帰ってきた。
「誕生日だろ」
　封筒から出てきたのは、楓ちゃんからのバースディカードだった。小さくちぎった紙で描かれたバースディケーキ。かわいらしい手書きの文字で、『HAPPY BIRTHDAY』と記されている。
「忘れてました……」
　嬉しくて、自分でも頬が緩んでいるのがわかる。わざわざ虎徹さんに託してくれたんだ。
「忘れんなよ、誕生日なんかさ」
「別に蔑ろにしてたわけじゃないですよ。このところ忙しくて、今日だというのを失念していました」