まほやく
ツキシロ
DONEフィ晶バレンタイン小話です。甘め。めくるめく春「もしもこのケーキの中に、惚れ薬が入っていたらどうする?」
そう言うと、女──今代の賢者──は、ごほごほと大げさに咳き込んだ。彼女の前に置いてあるルージュベリーのショートケーキは、既に三分のニほどがその胃袋におさまっている。
「おっと、大丈夫? お茶飲んで」
ポットを取り、温かい紅茶をカップに注いでやる。ぬるくなってきていたのだろう、彼女はカップを取ると、それを一息に飲み干した。
「ほ、惚れ薬って、そんなの、この世界にはあるんですか?」
尋ねてくるベリー色の唇のそば、柔らかそうな頬は赤くはなく、どちらかというと青い。
やれやれ、と内心溜息をついて、肩をすくめた。籠絡という言葉が聞きすぎたようで、どうもこの賢者は、俺に心を許してくれない。前途多難だ。
1439そう言うと、女──今代の賢者──は、ごほごほと大げさに咳き込んだ。彼女の前に置いてあるルージュベリーのショートケーキは、既に三分のニほどがその胃袋におさまっている。
「おっと、大丈夫? お茶飲んで」
ポットを取り、温かい紅茶をカップに注いでやる。ぬるくなってきていたのだろう、彼女はカップを取ると、それを一息に飲み干した。
「ほ、惚れ薬って、そんなの、この世界にはあるんですか?」
尋ねてくるベリー色の唇のそば、柔らかそうな頬は赤くはなく、どちらかというと青い。
やれやれ、と内心溜息をついて、肩をすくめた。籠絡という言葉が聞きすぎたようで、どうもこの賢者は、俺に心を許してくれない。前途多難だ。
ツキシロ
DONEミス晶バレンタイン小話。多分甘め。お手伝いさんにご用心「消し炭をください」
キッチンの入り口に立って言ったのに、流し台の前の女は振り向かない。いつもはおろしている髪を後頭部でくるくるとまとめていて、そこには地味な木のバレッタが刺さっていた。
「賢者様、消し炭が食べたいです」
背後まで歩いていって再度言ってやった。見下ろす手元には、何やら甘ったるいにおいがする、茶色いものが入ったボウル。彼女はそれをヘラでぐるぐると混ぜている。
「聞いてますか、晶」
「聞いてます!」
振り返ってこちらを見てきたのは、エサを頬にためすぎたリスのような膨れっ面だった。その頬は少し赤い。
「もう、ミスラ、何でいるんですか?」
「はあ? 何でって、俺が強いから、魔物を一撃で倒して、任務がすぐき終わったからですけど。当たり前じゃないですか」
1372キッチンの入り口に立って言ったのに、流し台の前の女は振り向かない。いつもはおろしている髪を後頭部でくるくるとまとめていて、そこには地味な木のバレッタが刺さっていた。
「賢者様、消し炭が食べたいです」
背後まで歩いていって再度言ってやった。見下ろす手元には、何やら甘ったるいにおいがする、茶色いものが入ったボウル。彼女はそれをヘラでぐるぐると混ぜている。
「聞いてますか、晶」
「聞いてます!」
振り返ってこちらを見てきたのは、エサを頬にためすぎたリスのような膨れっ面だった。その頬は少し赤い。
「もう、ミスラ、何でいるんですか?」
「はあ? 何でって、俺が強いから、魔物を一撃で倒して、任務がすぐき終わったからですけど。当たり前じゃないですか」
ツキシロ
DONEオー晶バレンタイン小話。あんまり甘くない???さんざめく心臓オー晶
目が覚めた時には、中天に月が昇っていた。
腹を触ってみる。もたれた木の幹には、指が触れない。完全に貫通していた穴は塞がって、血も止まっている。ミスラの魔力の残滓を感じながら、呪文を唱えた。血のにおいがようやく消える。
「ちっ……」
舌打ちをして立ち上がる。血が足りないから、足元がふらついた。瞼の裏、記憶に残る閃光。あの忌々しい髑髏。
もう一度呪文を唱えると、魔法舎に戻った。既に夜中だから、暗く、静まり返っている。ひょっとしたらバーは明るいかもしれないが、足を向ける気にはとてもならない。
足を引き摺るように歩いていくと、キッチンから明かりが漏れていた。ネロが仕込みをしているのだろうか。そう思って覗いてみたら、見えたのは、もっと小さな背中だった。
2216目が覚めた時には、中天に月が昇っていた。
腹を触ってみる。もたれた木の幹には、指が触れない。完全に貫通していた穴は塞がって、血も止まっている。ミスラの魔力の残滓を感じながら、呪文を唱えた。血のにおいがようやく消える。
「ちっ……」
舌打ちをして立ち上がる。血が足りないから、足元がふらついた。瞼の裏、記憶に残る閃光。あの忌々しい髑髏。
もう一度呪文を唱えると、魔法舎に戻った。既に夜中だから、暗く、静まり返っている。ひょっとしたらバーは明るいかもしれないが、足を向ける気にはとてもならない。
足を引き摺るように歩いていくと、キッチンから明かりが漏れていた。ネロが仕込みをしているのだろうか。そう思って覗いてみたら、見えたのは、もっと小さな背中だった。
ツキシロ
DONEファウ晶バレンタイン小話。甘め。そして僕は走り出す「賢者、居るか?」
コンコン、とノックをしたら、室内から控えめな返事が聞こえた。入っていいですよ、とのことだったので、ドアを開けたら、鍵がかかっていなかった。
「失礼するよ」
「こんにちは、ファウスト」
いつもの笑顔で迎えてくれる、そんな、当たり前とも言えることが嬉しい。
「ああ、こんにちは。ところで、昼間でも鍵はかけるように言わなかったか? 二階のメンバーは大丈夫だと思うが、他の階にはいきなり入ってくる者も居るだろう」
賢者の書を書いていたところなのか、彼女は机の前の椅子に座っていた。その肩にはサクリフィキウムが乗っている。双子たちの使い魔だが、彼女の好みを反映して、見た目は随分と可愛らしい。
「そうでした。すみません、うっかりしてて」
2095コンコン、とノックをしたら、室内から控えめな返事が聞こえた。入っていいですよ、とのことだったので、ドアを開けたら、鍵がかかっていなかった。
「失礼するよ」
「こんにちは、ファウスト」
いつもの笑顔で迎えてくれる、そんな、当たり前とも言えることが嬉しい。
「ああ、こんにちは。ところで、昼間でも鍵はかけるように言わなかったか? 二階のメンバーは大丈夫だと思うが、他の階にはいきなり入ってくる者も居るだろう」
賢者の書を書いていたところなのか、彼女は机の前の椅子に座っていた。その肩にはサクリフィキウムが乗っている。双子たちの使い魔だが、彼女の好みを反映して、見た目は随分と可愛らしい。
「そうでした。すみません、うっかりしてて」
ヨシャオ🐿️
DONE🎃Trick or Treat!!👻「しゃーねーなー」
▼クレジット(敬称略)▼
モデル:くりもも、ステージ:ありさと,しゃち、アクセサリ:72ca,azyazya,Sinful,蒼キツネ
ヨシャオ🐿️
PAST過去ツイ静画ログ【まほやく】最後のは動画のサムネです。
《クレジット》
※2枚目のみデメキッパ式モデル
yukiti式ブラッドリー,リケ/rico式ミスラ,オーエン/ろここ式スノホワ/野良式ファウスト,シノ/しろクロ式ヒース/くりもも式ネロ/nie式ミチル/シロタカブ式真木晶♂/ぽてと式羊 10
yayosan_P
MOURNINGシノとヒース(とファウストとネロ)の話です。まだほやくんに触って1か月くらいで、イベストをほとんど読めてない状態で書いたやつですが勢いが気に入っています。
色々あって某所からお引越し再掲。
カプ要素はないけどいつものシノだなぁ要素はあります。
半世紀先の追憶 目の前に広がる光景を前に、心の声のまま「珍しいな」と口にする。ふふんと得意げに口角を上げながら「だろう?」と返した子どもの手に収められていたのは実技科目で使うような魔道具ではなく、魔法に関する学問書だ。
ファウストが日頃の講義で使うものとは違う。真新しさは感じられずに若干の古めかしささえ覚えるそれは、おそらく魔法舎に保管されている蔵書の中から引っ張り出されたものだろう。隙あらば座学に対する文句を垂れて、実技への転向を求める男が持つにはあまり似付かわしくもない。
そもそも場所だって、意外性が多く含まれている場所だった。魔法舎にあるこの空き部屋は東の国の面々が授業に使うことが多く、真面目なヒースクリフや授業の用意を必要とするファウストであればともかくとして、それ以外の人物が寄り付くことは滅多にないはずなのだ。
16902ファウストが日頃の講義で使うものとは違う。真新しさは感じられずに若干の古めかしささえ覚えるそれは、おそらく魔法舎に保管されている蔵書の中から引っ張り出されたものだろう。隙あらば座学に対する文句を垂れて、実技への転向を求める男が持つにはあまり似付かわしくもない。
そもそも場所だって、意外性が多く含まれている場所だった。魔法舎にあるこの空き部屋は東の国の面々が授業に使うことが多く、真面目なヒースクリフや授業の用意を必要とするファウストであればともかくとして、それ以外の人物が寄り付くことは滅多にないはずなのだ。
@pepper_ranks
DOODLEカヴェアルの約束(まほやくパロ)これ驚きなんですがあんま改変してないんですよね・・・アニメ始まる前にとりあえず描きたかったパロ
牢屋を自室と言ったり記憶が定着できなかったりお互い大事に思ってるのにすれ違ってる主従とかのカアも見たい
シンプルに「約束ができない」とか「しんだら宝石になるから墓が空っぽだったり野垂れ死んでもわからない」っていうほやパロも見たい、ほやはいいぞ 2
tera_retry
DONE12/17開催WEBオンリー【魔法使いの〆切】用展示漫画。ネロぬいと魔法舎の面々がわいわいするお話です。
※以前書いた「オーエンと賢者くんが逆トリするお話」と同じ世界線です。
https://poipiku.com/2441968/5623123.html 7
あくろ@AKCLO1
DONE羊と猫のワルツ8参加作品(2024/10/12 23時更新)■44枚 https://privatter.net/i/7570757
過去作品は まほやく(ログイン限定) https://privatter.net/category/14306
●胸の三角 https://privatter.net/p/10986271
●あれもこれも https://privatter.net/p/1098 21
momo
DONE童话风 骨科孤独之塔 相关参考:jusf周存
童话
出现的歌词:jusf周存
高高的塔楼之上,Chloe透过那扇小小的窗户,望向外面美丽而神秘的世界。早已忘记了草地踩起来是什么触感,他将半个身子探出去,伸手想要触摸草地——除非摔下去,否则根本不可能。只有炙热的阳光烘烤着他的背部。
居住在高塔上的他,每天能做的事情就是看着墙上的时钟咔哒咔哒,等它转到该吃饭的点,就跑到那个小小的漆黑通道前,拉起发霉的麻绳,把简陋的餐食升到自己面前。有时候也会拉起一些书籍或者针线和布料,全都是他那许久未谋面的母亲可怜他一个人在这里无聊,悄悄让士兵送上来的。
不过幸好,这里有台陈旧的缝纫机和一个裁缝盒,像是被谁遗忘在这里的,却培养了Chloe的一点乐趣和爱好,也帮他消磨了时间。幸好自己小时候还在母亲身边待过一段时间,否则现在大概连说话都成问题了吧。
5518童话
出现的歌词:jusf周存
高高的塔楼之上,Chloe透过那扇小小的窗户,望向外面美丽而神秘的世界。早已忘记了草地踩起来是什么触感,他将半个身子探出去,伸手想要触摸草地——除非摔下去,否则根本不可能。只有炙热的阳光烘烤着他的背部。
居住在高塔上的他,每天能做的事情就是看着墙上的时钟咔哒咔哒,等它转到该吃饭的点,就跑到那个小小的漆黑通道前,拉起发霉的麻绳,把简陋的餐食升到自己面前。有时候也会拉起一些书籍或者针线和布料,全都是他那许久未谋面的母亲可怜他一个人在这里无聊,悄悄让士兵送上来的。
不过幸好,这里有台陈旧的缝纫机和一个裁缝盒,像是被谁遗忘在这里的,却培养了Chloe的一点乐趣和爱好,也帮他消磨了时间。幸好自己小时候还在母亲身边待过一段时间,否则现在大概连说话都成问题了吧。
なつゆき
PROGRESS【まほやく】これ(https://poipiku.com/580868/9699827.html)の続き。これで半分くらい?全部できたら支部にまとめようかなと思っています。→まとめてます https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22949187
理想郷 21
「なんでいるんだ」
それは俺のセリフなんだけどなあ、とフィガロは苦笑した。かつては尊敬もした人物だが、こうして改めて見ると実に胡散臭い笑顔の持ち主だ。
入学式から数日経った放課後、一年生の教室。担任ではない教師との接点はあまりなく、ようやっとふたりきりで言葉を交わす機会を得た。
ファウストがわざわざ実家から遠い他県の寮付きの学園を選んだのは、誰も自分を知らないところに行きたかったからだ。
メディアに出ていたこともあるので、多少顔を知られているのかはもう仕方ない。興味本位で近づいてきても現在の無愛想な自分を知れば自ずと離れていくだろうからどうでもいい。
そう考えていたのに、いざ入学してみたら旧知の教師がいたのだ。脱力もしたくなる。
14879「なんでいるんだ」
それは俺のセリフなんだけどなあ、とフィガロは苦笑した。かつては尊敬もした人物だが、こうして改めて見ると実に胡散臭い笑顔の持ち主だ。
入学式から数日経った放課後、一年生の教室。担任ではない教師との接点はあまりなく、ようやっとふたりきりで言葉を交わす機会を得た。
ファウストがわざわざ実家から遠い他県の寮付きの学園を選んだのは、誰も自分を知らないところに行きたかったからだ。
メディアに出ていたこともあるので、多少顔を知られているのかはもう仕方ない。興味本位で近づいてきても現在の無愛想な自分を知れば自ずと離れていくだろうからどうでもいい。
そう考えていたのに、いざ入学してみたら旧知の教師がいたのだ。脱力もしたくなる。
黒乃maho
DONEシンデレラパロ/ギャグしかない。フィガロ→ファウスト←レノ
みたいな感じです。
ファウストデレラ昔々ファウストデレラと継母と二人の義姉がいました。
継母と義姉はとても意地悪で、毎日ファウストデレラを虐めていました。
「おい、埃が残ってんぞ。ちゃんと掃除したのか?」
最近気だるげな料理人の彼に振られた次女、ブラッドリー。
「甘くて白くてドロドロしたやつ、早く作ってよ」
騎士見習いに相手にされてない長女、オーエン。
「お腹空きました、とりあえずなんか作ってくださいよ」
再婚相手を放って、若い金髪の少年に夢中の継母、ミスラ。
「君たちは…少しは自分でどうにかしようと思わないのか!?」
父が再婚したせいで忙しく働いている少女、ファウストデレラ。
ファウストデレラはいつも三人に我儘を言われ、忙しく日々を送っていました。
2585継母と義姉はとても意地悪で、毎日ファウストデレラを虐めていました。
「おい、埃が残ってんぞ。ちゃんと掃除したのか?」
最近気だるげな料理人の彼に振られた次女、ブラッドリー。
「甘くて白くてドロドロしたやつ、早く作ってよ」
騎士見習いに相手にされてない長女、オーエン。
「お腹空きました、とりあえずなんか作ってくださいよ」
再婚相手を放って、若い金髪の少年に夢中の継母、ミスラ。
「君たちは…少しは自分でどうにかしようと思わないのか!?」
父が再婚したせいで忙しく働いている少女、ファウストデレラ。
ファウストデレラはいつも三人に我儘を言われ、忙しく日々を送っていました。