Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    アルテ

    kei

    DONE(4期ぐらい)
    アルテファリタ留学中の朱鳥の王子への叶わぬ片思いのお話
    おさばさんのhttps://privatter.net/p/7103993の前くらいかな…
    誰が最初にそう彼を称したのかわからないが、朱鳥は彼が王子という愛称で呼ばれる理由が納得できた。アルテファリタの官僚で高い地位にあり、執政官が名前を覚えている相手だし、紳士で状況の見極めも適切である。
     鍛えた心身からあふれる知性は本物の王子と見劣りしない。兄の隣にいても彼は気後れしないだろう。父の隣では警戒するかもしれない。だが母には優しく接してくれるだろう。
     美しい虹色の艶ですね、お母上譲りだったのですね
     そう言ってくれるに違いない。素朴で優雅さもある笑顔と仕草で。
     妄想だ。
     そんな言葉はもうかけてもらえないだろうと思いながら、朱鳥は部屋の隅で身を丸めていた。

    「美しい虹色の艶ですね」
     そう王子に言われた時、視線が自分の耳の横に向けられ、朱鳥の中の光がぱち、ぱち、と弾けるのに気づいた。
     これまで彼と接していて何度も感じていた胸踊るようなその感情が、底の底から溢れて弾けて、息苦しいほどだった。
     光の加減で揺らめいて綺麗でしょう、自慢です。とその場でくるりと一回転して見せればいいだけのことだったのに、朱鳥の心と行動は一致しなかった。

     彼に自分の髪に触れて欲しいと思った 4187