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    @47kei

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    POIPOI 36

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    DONE白国のおはなし 4期伏魔殿以降、苺果留学前後中時系列
    天へ咲く花 (https://privatter.net/p/7833541)前提
    *スイレン(水連)夫人・郭奉・苺果・涼華兄弟・露花
    長春色の頬を追いかけて「奉、シロバラ公主との婚約内定が決まりました」
     先触れが母、水連が直接足を運び伝えると伝えた時から郭奉はあの件だと構えていた。
     寝台に横になったままである非礼を侘びながら、郭奉は略式の礼をとった。
    「お母上様におかれては、第一女王の容家入リ内定をお喜び申し上げます」
     郭奉の部屋は、異様な明るさがあった。
     色鮮やかな色彩の天井画、無数に下がるガラス細工たちが七色の影を部屋に落としている。
     精緻な刺繍のされた鳥や草花から、ガラス玉やきれいな房飾りがついて下がっていて、窓から優しく駆け込んでくる風がそれらを揺らし、時には風鈴のように繊細な音を立てて部屋を駆け抜けた。病弱のため容領から出たことが数えるほどしかない郭奉のために、母である水連をはじめとして唯一の友人彩師星彩、親族たちが花守山各地から集めてくれたお守りたちだった。魔除けであったり病気平癒のまじない飾りであったり様々だ。部屋は薬草と、郭奉の趣味の絵につかう絵炭の香りが満ちていた。
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    DONE霊木解体(4)
    -終わり-
    前 : (https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=1425184&TD=4246859)
    穏やかな口ぶり、柔かな物腰。
     風流を体現した冬清王は国主にもっとも愛された王だった。
     一歩一歩進んでくる男の足取りは、セッカの記憶の中のかつての主人そのものだ。
     享年36歳。6年前に天へ還った王がなぜここにいるのかこの場の誰も分からなかったがセッカが最初に一喝した。
    「霊木の空間だからな、俺や公主の意識を読み取って幻影を出すくらい簡単だ。足止めのつもりならやり方が古いんだよ」
    「正しい思考だ我が叡智。だけど残念。私は私だ。だが信じなくてもいい、なにせ時間がない。急がないと春玲の生命エネルギーが全て吸い上げられてしまう。現状から求められる行動を優先して欲しい」
     突然現れて場の空気を支配した男はセッカの見覚えのある礼装をばさりと翻し、長い袖を開いて4人が目指す先を指した。
    「そこが目的地点のはずだよ」
     開けた視界の先には、シロツメ公主の腕からこぼれ落ちる光の筋が収束している。
     叡智たちの求めた解体すべき構造のありかだった。
     セッカはすぐにその光の収束地点へヴィトロと走り出し用意していた術式展開をはじめた。取り残される形になったヴルムとシロツメ公主は手を繋いだまま未知の影法師、 8696

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    DONE霊木解体(3)
    前 : (https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=1425184&TD=4121287)
    霊木解体実行の日取りを正確に定めるのには、幽達の動きを細かに把握する必要があった。
     セッカは慈悲王従者の茉莉を追い情報を集め、ジブリールは幽達の側で彼の計画を共有した。
     幽達が代理人と妖精格を使って己に刻みつけられた誓約を書き換える計画であることを告げると、シロツメ公主は視線を落として夫の手を握りしめ、感情を吐露した。
    「彼はいつまでも私を道具扱いする」
     生き愛する人の元で自由に生きられるようになった彼女にとって、彼から向けられる視線は鋭い棘だった。
     幽達に自分が価値のある生きるべき命だと認識させたい気持ちを否定できなかった。
     手の平に残る拷問の跡が、身体中に染み付いた痛みの記憶が訴えてくる。
     彼は、霊木の妖精格という道具としてシロツメ公主を見る目をやめない。
     自由を得たシロツメ公主には耐え難い視線だった。
    「だが──ジブリールを殺すという手段を取らなかったな」
     ヴルムは握りしめられた手をもう片方の手で覆いながら妻の持つ優しさに添う言葉を続けた。
    「シロツメが賭けヴィトロが感じたように、幽達という男に、誰かを思う感情が芽生えていることは否定できなくなった」
     ヴィトロは 7395

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    DONE霊木解体(2)
    前 : (https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=1425184&TD=4113548)
    季節は夏を迎えて日差しは強く、これまでにない形で子を孕んだジブリールは日々辛そうだったが、彼の世話をするという名目で、二人の生活する離れに自然と足を運ぶことができるのは行幸だった。
     セッカは医学博士であったし、ヴィトロは執政官で彼の上官になるので不自然さはない。慈悲王幽達の変化を見るには都合がよかった。
     ベッドに横たわるジブリールの傍ら、ちらりと向かいの幽達を見れば、空気のような従者と共に静かに番を見つめていた。
    「倒れた際に、すぐ抱えたから外傷はない」
     いつでもこの男は涼しげな眼差しをしていて、為政者の性質はどこかヴィトロの養父に似ている。銀色の髪は、花守山の民が生来もつ銀髪といえるだろうが、少し鈍い沈んだ色をしていて、隣にいる従者も同じだった。感情の猛りのない落ち着いた色彩の銀髪は幽達の持つ印象そのままだ。
    「倒れたのも季節的なものと、体力低下だろう。ちゃんと食わせろよ」
    「必要なものがあれば、取り寄せよう。熠燿はアシュタルの出だ。祖国の食べ物が口に合うと思うが」
    「柘榴とか西洋李とかがいいと思うぞ」
     セッカがジブリールの額に冷えた布を充てがうと、幽達は進んで仕事を引き継い 6404

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    DONE霊木解体 ( 1 )妖精を霊木送りにすることで、霊木は活性化する。
     選ばれた妖精の魂は霊木の中に取り込まれ、魂が擦り切れるまでエネルギー源にされ、霊脈から吸い上げた力と練り合わされ、妖精の命ひとつででいくつかの不死の実を結実する。
     霊木が成長するための呼び水のような存在であり、単独では存在し続けられない霊木という存在を、セッカは「人のようだ」と思う。
     霊木は貪欲に成長し花守山に長寿と仙術という奇跡を提供し続ける。
     本当に花守山にとって必要で人道的なものであるかどうかは疑わしい。
     セッカは身を持って知ってしまった。
     この時代でたったひとりの命を犠牲にすればいいわけではない。ひとりを愛する人がいて、取り巻く人たちがいて、波紋のように届く範囲すべてに影響を及ぼすのだ。
     それゆえに、当事者である霊木の妖精格であるシロツメ公主春玲が「霊木の成長構造を解体したい」とセッカに相談してきた時は、少女に課せられた大きな宿命を感じさせられた。
    「私は霊木に選ばれたために、平穏な生き方を失いました。霊木の妖精格でなければ、いまこうしてアルテファリタの公邸で執政官と向かい合ってお茶を頂くこともなかったでしょう。故郷 9625

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    DONE(4期ぐらい)
    アルテファリタ留学中の朱鳥の王子への叶わぬ片思いのお話
    おさばさんのhttps://privatter.net/p/7103993の前くらいかな…
    誰が最初にそう彼を称したのかわからないが、朱鳥は彼が王子という愛称で呼ばれる理由が納得できた。アルテファリタの官僚で高い地位にあり、執政官が名前を覚えている相手だし、紳士で状況の見極めも適切である。
     鍛えた心身からあふれる知性は本物の王子と見劣りしない。兄の隣にいても彼は気後れしないだろう。父の隣では警戒するかもしれない。だが母には優しく接してくれるだろう。
     美しい虹色の艶ですね、お母上譲りだったのですね
     そう言ってくれるに違いない。素朴で優雅さもある笑顔と仕草で。
     妄想だ。
     そんな言葉はもうかけてもらえないだろうと思いながら、朱鳥は部屋の隅で身を丸めていた。

    「美しい虹色の艶ですね」
     そう王子に言われた時、視線が自分の耳の横に向けられ、朱鳥の中の光がぱち、ぱち、と弾けるのに気づいた。
     これまで彼と接していて何度も感じていた胸踊るようなその感情が、底の底から溢れて弾けて、息苦しいほどだった。
     光の加減で揺らめいて綺麗でしょう、自慢です。とその場でくるりと一回転して見せればいいだけのことだったのに、朱鳥の心と行動は一致しなかった。

     彼に自分の髪に触れて欲しいと思った 4187

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    DONEhttps://poipiku.com/1425184/3485521.html ⇒引き離せないもの(2)四十歳になったとかいう話を数年前に聞いたが、花守山の仙人たちはまるで衰えがない。ジブリールの報告を受け、思慮に更ける慈悲王は鋭い眼光のまま、黙していた。
     色素が薄く、空の雲と並べば溶けてしまいそうなほどに白い彼らは、その色の印象のままに清らかでいようとするし、争いと血の穢れを忌避し、残忍を良しとしない。
     ──と、いうが、後者は建前上のものではないかと、ジブリールは思った。
     この慈悲王という存在は、花守山において特に異質だと感じていた。
     穢れを忌避する姿勢はあるが、残忍で無慈悲なところは、花守山の民の本質からかけ離れている。身内で政権を奪い合う国主一族においても存在自体が異質に思えた。
     普通の人間であれば、個より全という帝王学を叩き込まれていてもここまで残忍な行いはできないと思う。彼は愛というものを知らないのだろう。
     シロツメ公主の教育過程を見ていたジブリールはそう結論づけていた。
     手心を知らないこの無慈悲な王に、失敗の報告をするのは恐ろしいが、避けては通れない。今後の方針を聞かずに独断で判断すればもっとひどいことになる。
     慈悲王幽達から託された霊木再生の施策──代理人に 6027

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    DONEhttps://poipiku.com/1425184/3457535.html⇒ 引き離せないもの三国を探し歩いても、これほど同じ顔の人間などいないものだ。
    「何だお前は」
     向き合うヴルムとセッカは同時に同じ言葉を発した。ヴルムは敵対心を持って、セッカは既視感を持って。
     似ている、というには似すぎている。冬清王の若い頃は知らなかったが、記憶の中のかつての主人の姿がきれいに重なり、目眩すら覚えた。
     しかも今シロツメ公主はこの男をヴルム様、と呼んだ。
     護国卿ヴルム、シロツメ公主が嫁入りした男の名前だ。
    「セッカ、離してください」
     シロツメ公主はヴルムの姿を認識すると、セッカへ警戒心を強めた。
     慈悲王がシロツメ公主に直接使者を送り、使命の遂行を即したことが一度だけあった。
     使者は冬清王と暮らした冬ノ宮で、短いながらも幸福な時を一緒に暮らした侍女だった。年が同じであったから再会した時は13歳で、彼女も嫁入りを控えていると、祝い事であるはずが暗い顔をしていた。
     「あなたが慈悲王から託された使命とやらを果たさなければ、実家も未来の夫の未来がない」と泣きながらすがりついてきたのだ。
     動揺するシロツメ公主の心が激しく揺れているうちに、その侍女一族は戦時中の反逆行為の濡れ衣を着せら 6140

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    DONEhttps://poipiku.com/1425184/3449166.html
    ⇒ 繕うものたち
    二胡を弾く手を止めたのは、シロツメ公主の夫、アシュタルの護国卿ヴルムだった。
     気分よく聞いてくれていると思っていたので、驚いて弦を落とした。
     落ちた弦を夫が拾うが、ヴルムはシロツメ公主へ手渡さない。
    「聞きたいことがある」
    「な、なんでしょう、ヴルム様」
     一呼吸置いて、ヴルムは自分が感情的にならないように、意識して続けた。
    「お前に冬清王という婚約者がいたのは聞いてる。それがお前の目の前で死んだという話も聞いた」
     誰からそれを聞いたのか、と思うが答えはすぐにでてきた。アシュタルにはシロツメ公主を監視する目がいくつもある。その一つは直接慈悲王と繋がっている宰相ジブリールだ。
     シロツメ公主の視界が暗くなるのがヴルムにも分かったが話は止めなかった。
    「その婚約者は、アシュタルが殺したのか?」
     
     もう六年以上前のことだ。冬清王潤越とその従者セッカと三人で、国主領の山間に花見に出かけた。手を引かれ時に抱き上げてもらいながら、美しい景色を楽しんだ。
     今ならば行かないでと大泣きをしてでも止めただろう。
     戦時中とはいえ、国主宮も近いその丘が血塗れの惨状になることなど、だれも想像して 7531