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    アレク

    さしみ

    DONEアレクくんの最初の日の話
    サラオスを臨む昔から、大きな生き物に心惹かれる性質だった。

     子供の頃に父親に『サラオスの亡骸』を見に連れて行ってもらったことがある。
    『サラオスの亡骸』というのは、高地ラノシアにある巨大生物の亡骸のことで、『サラオス』というのは、神話において海神リムレーンに命じられて海を作ったとかいう、巨大な海蛇のことらしい。その巨大生物の亡骸は、神話にあやかって名付けた別物だという話だが、本物かどうかはどうでもよかった。とにかく子供の頃の俺は、世界にはこんな生き物が存在するのかと、未知の巨大生物の骨を見ていたく感動したものだ。

    「これな、実は俺が倒したんだよ」

     『サラオス』を眺めながら、父親がそう言った。この時の俺は十歳にもなろうかという頃で、大人の言うことを疑いもなく信じる年頃はもうとっくに過ぎていた。 父親は、若い頃には冒険者として各地を飛び回っていたようだが、この時すでに、夜は酒場を営みながら、昼は近隣のギルドで小さい依頼を受けて畑を荒らしたり、旅人を脅かす魔物の討伐などを請け負うのが基本の生活になっていて、どう考えてもこの人にそんな気概があるとは思えなかった。
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    ngw

    PAST2024年1月に発行したネロファウ同人誌のWEB再録です。
    もしもファウストがアレクに裏切られなかったら?というもしもの妄想で大盛り上がりしてしまい書きました。
    中央の国でえらい人になったファウストと料理屋のネロが恋に落ちるラブコメです。
    ネファメインでレノフィも含む下品な無配→ https://poipiku.com/1697192/11265598.html
    たとえば、週に一度来るガレットと酒が好きな客 注意書き

     この話には宗教に関する描写があります。それらは複数の宗教を参考にした本作オリジナルのものであり、また、特定の宗教や宗教そのものを礼賛したり貶めたりする意図はありません。
     そして、原作改変と捏造しかありません。

     以上をご承知おきください。


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     俺が中央の国の王都にやって来たのは少し前のことだ。
     街の中央には王族が政治を執り行うグランヴェル城があり、その周囲には城下町が広がっている。城を中心に住宅がひしめき合い、あちこちにマーケットや飲食店があり、住人は明るく誠実で、街角では挨拶や笑い声が響いていて活気がある。インフラも、快適に生活できるよう行き届いた整備がされており、適度に人と人の間に距離感があった。西の国のように派手ではないものの国は豊かで、道ゆく市民の表情にも余裕がある。国土の四方を他国に囲まれているため、隣国との関係がピリついているのだろうと予想していたのに、入国してみれば拍子抜けするほど平和だった。
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