01【今は一人でいたい。】 　　LINK VRAINS、現実世界ともに大きな爪痕を残したライトニング、ボーマンらによる事件。
　PlaymakerとAiの決死のデュエルによりなんとか平穏を取り戻したデンシティ。ソウルバーナー、リボルバーを始めとしてボーマンに吸収された住民たちも全員が生還し、事件はひとまずの終息を迎える。──しかしそれはらあくまでも人間側にとっての話だ。

　尊は一人、海岸沿いに足を運んでいた。現実で走り回っていた訳ではなかったが、精神的にも肉体的にも疲れ切っていた。しかし体は休息を求めているのに、脳が眠ることを拒否して休む気にもなれない。
　草薙も遊作も、今はみんな自分たちのことに手一杯で、尊に気を割ける者はいない。

ノイマン「あれ？お前髪変わった？」
チャンドラ「なんですかその質問。変わってませんけど！？地毛ですけど！？」
ノイマン「なんか柔らかくなった…？」（さわさわ）
チャンドラ「勝手に触るなよ？！……うーん、オーブに亡命してからシャンプー変わったからかな。地球軍の支給品合わなかったんだよね」
ノイマン「なるほどなぁ」
チャンドラ「そういうお前は何も変わらないな」
ノイマン「支給品しか使ってないが？」
チャンドラ「地球軍とオーブ軍の支給品って結構違うぜ？」
ノイマン「ふーん？」
チャンドラ「いつでもサラサラなお前の髪が時々うらやまにくらしいよ」
ノイマン「どっちだよ(笑)」

(にいさんはどこに行ったんだ？)

トーマが訓練室を覗くとそこにはハーマンがいて、シュバルツの上着と思われものがイスに掛けてあるが肝心の本人は見当たらない。

「ハーマン大佐、シュバルツ大佐を見かけませんでした？」
「…私ならここだが？」
「にいさん？！」

ハーマンの後ろからひょっこりと出てきた兄シュバルツに驚いて声が裏返ってしまったのは仕方のないことだろう。すっぽりと、と言ってしまっては失礼かもしれないがハーマンの身体で隠れてしまっていたのだから。

「ぶふっ、…いてっ」
「で、なんの用だ？シュバルツ中尉」

ハーマンはシュバルツから脇腹に手刀を喰らったのか痛そうに摩っている。兄の存在に気づくことが出来なかった己のせいで、とほんの少しだけ悪い気もしたが余計な言葉は紡がないに限る。ハーマンの姿は数分後の己かもしれないのだから…

メッセージボトル　ビクター・グランツはポストマンである。
　仲の良い子犬と共に銅の鈴の音を聞き、待ち望む人々に手紙を送り届ける。
　いつか、自分宛ての手紙が届いたらいい。そんなささやかな願いを持つ、しがないポストマンに過ぎない。過ぎなかった。

　ビクター宛ての手紙は届けられ、その願いは叶えられた。
　招待状という形ではあったが、あの手紙には誠意が込められていた。
　ビクター・グランツという名前が書かれているのを見るだけで、彼は高揚した。そして、今度はやり取りを目的とした手紙を欲して、招待されたエウデリィケ荘園へと向かった。

　しかし、この場に手紙を送り届ける相手はもういない。

（良かったね、ビクター。君はもう、役目を終えたんだよ）