ロイグ
三咲(m593)
DOODLE三百字小説。ラフロイグ&ガープ+アレス。もったいないからという言い訳。 いつも思ってたんだけど。
独り言のように始まった疑問は、魔皇の手元を見詰めて止まる。カップをつかむ形で置かれた手は、しかし持ち上げることなく離れていく。
「飲めないのにどうして入れるんだ?」
例えば、進行中の計画の確認。これからの提案と議論。そして一眠りからの気だるい時間。口にする茶は、銘柄こそ巡回するものの、どれもすっかり馴染んだ香りだ。
だからこそ、どんな時でも変わらずこなせる。習慣のようなものだと答えると、そういうもんか、とアレスはカップに目を落とす。
そこで終わるかと思われた疑問が、自分の手元まで伸びていることに、ガープは気付いた。減ることのない茶は、誤魔化すための行き先を、まだ決め兼ねている。
310独り言のように始まった疑問は、魔皇の手元を見詰めて止まる。カップをつかむ形で置かれた手は、しかし持ち上げることなく離れていく。
「飲めないのにどうして入れるんだ?」
例えば、進行中の計画の確認。これからの提案と議論。そして一眠りからの気だるい時間。口にする茶は、銘柄こそ巡回するものの、どれもすっかり馴染んだ香りだ。
だからこそ、どんな時でも変わらずこなせる。習慣のようなものだと答えると、そういうもんか、とアレスはカップに目を落とす。
そこで終わるかと思われた疑問が、自分の手元まで伸びていることに、ガープは気付いた。減ることのない茶は、誤魔化すための行き先を、まだ決め兼ねている。
mizukaki_kz
MEMO安心してください!シナリオ等のネタバレは一切ない!何気なしに慧とシアンでお題ガチャ回したらおもろいぐらい既視感しかなかったから未来の自分がニヤニヤする用に残してるだけ! 13三咲(m593)
DOODLEアレス&ラフロイグ。パラレル。もしアレスさんが本来の姿を封印されていなかったら。 あんなに騒がしかった感覚が、今は凪のように澄んでいる。肉体はすでに無いのだろう。だから呼吸が出来なくても構わないのだ。熱さもなければ、皮膚が灼ける痛覚もない。身体という器を取り去るのが、こんなに穏やかなものだとは思わなかった。
それでも未だ、魂という黒煙だけは残っていた。なにもない身体では留まることも出来ず、ただ吹かれるまま流されていく。
視界はとうに失っている。ならば今「見えている」ものは何なのだろう。黒と白の螺旋が、見渡す限りに絡み合い、どこか一点へ向けて伸びている。あの世にしては前衛的で、美しいとさえ思う。
このまま身を任せるのも悪くない。だが「自分」ならそれを許さないはずだ。形の無い腕を何度も伸ばし、ようやくそばの一すじをつかみ取った。
1245それでも未だ、魂という黒煙だけは残っていた。なにもない身体では留まることも出来ず、ただ吹かれるまま流されていく。
視界はとうに失っている。ならば今「見えている」ものは何なのだろう。黒と白の螺旋が、見渡す限りに絡み合い、どこか一点へ向けて伸びている。あの世にしては前衛的で、美しいとさえ思う。
このまま身を任せるのも悪くない。だが「自分」ならそれを許さないはずだ。形の無い腕を何度も伸ばし、ようやくそばの一すじをつかみ取った。
三咲(m593)
DONE三百字小説。ガープとラフロイグ。ラフ様のトレーニングメニューは半端ないんだろうなあというイメージでした。 人心地着いたところで、魔皇は早々に立ち上がった。
合戦が近い。演習を繰り返した分、彼も消耗しているはずだ。ガープの心配をよそに、体はまだ十分動く、と得物を掲げて見せる。
頂点としてふさわしい強さを。楔のようになっていた鍛錬は、今はただ、自分らしくあるための習慣になったという。その楽しみを添えたのが自分たちだったと、かつて語った顔が今、笑い顔に重なっている。
「少し走り込んでくる。貴様もどうだ?」
言いながらその場で駈けている足は、すぐにでも走り出しそうだ。休憩をしたら合流を。答えて見送った背中はもう、柱の向こうに消えている。
彼の言う「少し」は少しでは済まない。その事を思い出したのは合流したあとだった。
310合戦が近い。演習を繰り返した分、彼も消耗しているはずだ。ガープの心配をよそに、体はまだ十分動く、と得物を掲げて見せる。
頂点としてふさわしい強さを。楔のようになっていた鍛錬は、今はただ、自分らしくあるための習慣になったという。その楽しみを添えたのが自分たちだったと、かつて語った顔が今、笑い顔に重なっている。
「少し走り込んでくる。貴様もどうだ?」
言いながらその場で駈けている足は、すぐにでも走り出しそうだ。休憩をしたら合流を。答えて見送った背中はもう、柱の向こうに消えている。
彼の言う「少し」は少しでは済まない。その事を思い出したのは合流したあとだった。
_三咲
DONE三百字小説。アスモデウス&ガープ。(ガープ×ラフロイグ要素あり)「また陛下に上着を取られたのか」顔を見るなり笑い出したアスモデウスに、ガープは思わずため息をつく。暖かいから仮眠をとるのに丁度良い。そう言っていつもの赤いコートは、魔皇に寝具代わりにされている。
「寝具の一枚くらい献上すれば良かろう?」
「部屋に籠られてしまう」
「不都合でもあるのか?」
大ありだと言おうとして、ふと言葉を詰まらせていた。ソファを取られる以外は、仕事の邪魔をされるわけでもない。特に支障は無いはずだが。
そんな逡巡に気付いたのか、なるほど、と彼はつぶやく。
「噂好きのマトになりたくなければ、その格好で出て来るのをまずやめることだな」
至極もっともな言い分に、ガープは今度こそ言い返せなくなった。 312
三咲(m593)
MAIKINGガープ&ラフロイグ居たと思えばいなくなり、居ないと思えばそこにいる。自由気ままな赤色は、大仰な裾をはためかせ前を行く。ただ、少しは後ろを顧みてほしいと、ガープは常々思っている。暇と財を持て余す貴族ならともかく、彼は魔皇だ。一歩進むたびに起きる波紋の、その影響は計り知れない。
今日もまた私用を言いつけられ、予定がいくつか潰れてしまった。大したものではないと言われれば、反論は出来なかったのだが。
それにしても……と息を呑む。広がる麦の金色と、空の青が二分する視界。境界に立つ緑のロウソクを目印にしなければ、今どこに立っているのかも見失いそうになる。話には聞いていたが、この土地がすべて、彼のものだというから驚きだ。
佇んでいた赤色が振り返り、影が笑ったように見えた。
「今年もよく実った。また良い酒が飲めそうだ」
「……それで、私にどのようなご用命を」
麦の育成を見せるために、わざわざ連れ出したとは思えない。畑仕事でも言いつけられるのだろうか。そんなことを思っていると、黒いガントレットが閃き、グラスを掲げる形を取った。
「貴様に酒の味を見てほしい」
この地の南端には、魔皇御用達の蒸留所が 3039
三咲(m593)
DONE三百字小説。ガープ&ラフロイグ。たぶん向こうも同じような感じ。どうしてまた部屋に居座っているのか。言いながらカップをもうひと揃い用意したガープに、魔皇は当然のように答える。「一人いなくなって、さぞ静かだろうと思ってな」
耳の早さは相変わらずだ。喧嘩別れのようになったことも、話すまでもないだろう。
「弟子が独り立ちしたのだ。喜ばしいではないか」
惜しいのはそれだけ肩入れをしていたからだ。代わりに出された言い訳を、流し込もうとして顔をしかめる。
いつだって計算以外は上手くやれない。肝心な部分はおぼろげで、目を向ける前にかすんでしまう。目の前の姿もまた、そうだった。
断りもなく加えられた砂糖が、残った悔恨に溶け込んでいく。ひと息に飲み干して、忘れていた甘さを思い出した。 310
三咲(m593)
BLANKアレス&ラフロイグ。どこかに組み込むかも。駆け上がってくる足音に、面倒なやつだ、と魔皇は小さく笑う。ただ見送るつもりだったが、わざわざ挨拶をしに来たらしい。引き止めるつもりも、送り出すつもりもない。すでにそう告げているというのに。「やっと見つけたあ」
探したぞ、と飛び込んできた少年は、いつもとは少し違う鎧姿をしている。同じ赤色でも、剣士らしい出で立ちだ。彼と自分の明確な違いが、形を成したようで面白い、とも思う。
「お前にも言っておきたくてさ。……この姿になれたのも、お前のおかげだ」
「感謝されるような覚えは、ないのだが?」
肩をすくめて見せれば、少年は小さく噴き出して、「お前、結構顔に出るよな」と笑った。む? と睨むように首を向ければ、逃げるように顔をそらす。こんなやり取りももう、すっかり馴染んでしまっている。
「お前と戦ったこと、無意味にしたくないんだ」
だから王国に戻る。彼はそう言って、特に頭の固い従者も、見事に説き伏せていた。渋々送り出したであろう顔は、見なくとも想像がつく。
主が不在の間は、自分が代わりになだめてやろう。そんなことを思いながら、手元のグラスを持ち上げ、軽く振って見せる。半分になった記憶の中身は 768
三咲(m593)
DONE三百字小説。ガープ&ラフロイグ。ラフ様はアブストラクト的なゲームが強そうなイメージ。彼にとって、休憩とは頭を休ませることではないらしい。丸まった背中がなにやら唸り声を上げている。額を押さえたガープは、顔をしかめながら手元の本を睨んでいる。「邪魔をしても良いか?」とのぞき込めば、ぜひ、とだけ帰ってきた。かれこれ三日は悩んでいる。そう言って示された升目は、駒の攻め方を解いたもののようだ。戦局を打開するための一手は、自分との勝負を想定しているのかもしれない。あっさりと解を示したラフロイグに、大きく見開いた目は、それでも挑戦的な光を返した。
「一戦願えますか」
「下剋上を狙うか? 受けて立とう」
一手たりとも気を抜けない。そんな相手だからこそ、この手の駒は強者として、今も盤上に並んでいる。 306
三咲(m593)
DONE三百字小説。ガープ&ラフロイグ。合戦終わった後のひとコマ。ようやく片付いた。その声に振り返ると、大魔皇が伸びをしていた。紙の束を見やって、ガープは思わず目を見開く。書かれている額は、気前が良いなどという程度では済まない。そんな反応もしっかり見ていたのか、小さな笑い声がこぼれる。
「強者に支援は惜しまぬ。最強であるにはなにかと必要であろう」
そのことは身をもって知っている。自身の理想も、彼の援助なしでは叶わなかったものだ。
自分を打ち倒す者が現れたら、すべて譲り渡すつもりだ。いつか口にしていた言葉も、あるいは本心なのだろうか。その者は果たして、彼の支えとなれるのだろうか。
「少々くたびれた……ここで休ませよ」
巡り始めた思考は、背後から伸びてきた腕に遮られる。 309