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    ロイグ

    三咲(m593)

    MAIKINGガープ&ラフロイグ居たと思えばいなくなり、居ないと思えばそこにいる。自由気ままな赤色は、大仰な裾をはためかせ前を行く。
     ただ、少しは後ろを顧みてほしいと、ガープは常々思っている。暇と財を持て余す貴族ならともかく、彼は魔皇だ。一歩進むたびに起きる波紋の、その影響は計り知れない。
     今日もまた私用を言いつけられ、予定がいくつか潰れてしまった。大したものではないと言われれば、反論は出来なかったのだが。

     それにしても……と息を呑む。広がる麦の金色と、空の青が二分する視界。境界に立つ緑のロウソクを目印にしなければ、今どこに立っているのかも見失いそうになる。話には聞いていたが、この土地がすべて、彼のものだというから驚きだ。

     佇んでいた赤色が振り返り、影が笑ったように見えた。

    「今年もよく実った。また良い酒が飲めそうだ」
    「……それで、私にどのようなご用命を」

     麦の育成を見せるために、わざわざ連れ出したとは思えない。畑仕事でも言いつけられるのだろうか。そんなことを思っていると、黒いガントレットが閃き、グラスを掲げる形を取った。

    「貴様に酒の味を見てほしい」

     この地の南端には、魔皇御用達の蒸留所が 3039

    三咲(m593)

    BLANKアレス&ラフロイグ。どこかに組み込むかも。駆け上がってくる足音に、面倒なやつだ、と魔皇は小さく笑う。ただ見送るつもりだったが、わざわざ挨拶をしに来たらしい。引き止めるつもりも、送り出すつもりもない。すでにそう告げているというのに。
    「やっと見つけたあ」
     探したぞ、と飛び込んできた少年は、いつもとは少し違う鎧姿をしている。同じ赤色でも、剣士らしい出で立ちだ。彼と自分の明確な違いが、形を成したようで面白い、とも思う。
    「お前にも言っておきたくてさ。……この姿になれたのも、お前のおかげだ」
    「感謝されるような覚えは、ないのだが?」
     肩をすくめて見せれば、少年は小さく噴き出して、「お前、結構顔に出るよな」と笑った。む? と睨むように首を向ければ、逃げるように顔をそらす。こんなやり取りももう、すっかり馴染んでしまっている。
    「お前と戦ったこと、無意味にしたくないんだ」
     だから王国に戻る。彼はそう言って、特に頭の固い従者も、見事に説き伏せていた。渋々送り出したであろう顔は、見なくとも想像がつく。
     主が不在の間は、自分が代わりになだめてやろう。そんなことを思いながら、手元のグラスを持ち上げ、軽く振って見せる。半分になった記憶の中身は 768