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    北陸

    きたまお

    TRAINING初冬の北陸の湖で白鳥を見ているだけのイズホク(CPではない)——イメージちがったなあ。
     速杉ホクトはジャンパーのポケットに手を突っ込んで首をすくめた。視線の先には風でさざ波のたつ濃い青の湖。水面には無数の白い鳥がうごめいている。こんなにたくさんの白鳥を見たのは初めてだ。まとめて見ると、白鳥という生きものは身体がおおきくてぼってりしている。水面を移動しながら、長い首を縮めたり伸ばしたり、朝日を浴びてオレンジ色に染まった羽根を黄色のくちばしでつついたりと忙しい。そして、思っていたよりもやかましい。
    「先輩、これ、どうぞ」
     いつのまにか横に戻ってきた出水が、コートのポケットから取り出した缶をこちらに渡してくれた。受け取るとまだ温かい。缶コーヒーだ。サンキューと言って、さっそくホクトはプルトップを開ける。
     まだ十一月の頭だというのに、えらく寒い。どう考えても、もっと冬の装備でくるべきだった。移動の荷物を軽くすることにこだわりすぎた。東京駅で会ったときにも出水はずいぶんな大荷物だなと笑ったのだが、たぶん、出水のほうが正解だ。
    「さっき、あっちのふたりにも渡してきたんですけれどね、なんだか逆に迷惑そうな顔をされてしまいましたよ」
     出水が目線だけでさ 2151