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    占い師

    @t_utumiiiii

    DOODLE日記を介した占い師と探偵オルフェウスの会話 要素としてのイラゲキ ※日記のないキャラクターの言動等を捏造
    dialogue(占い師と探偵 ややイラゲキ) 全ての客人が去ってから時が経ち、今はただ廃墟となって朽ち果てるのを待つばかりのエウリュディケ荘園に、人探しの依頼を受けて訪れた探偵オルフェウスは、何者かによる妨害かポルターガイスト、さもなくば建付けの悪い扉、兎角運命の悪戯めいたそれによって辿り着いたリビングの内側に閉じ込められ、そこで身動きが取れなくなってしまった。
     外に出られないのであれば、内に向かうしか無い。十年前の火災以来、たびたび抜け落ちてまるで頼りにならない記憶と、境のふやけたような自我とを携え、荘園の奥深くへ向かって調査を始めたオルフェウスはそこで、本に挟まっていたか、或いは直前に掻き分けた紙束から、不思議と彼の手の中に残ったのか、仔細は覚えていないものの、兎に角手の中に持っていたある手紙の封を開けた。自分宛てのものではない書き置きや諸々を盗み見るのは探偵の性というものだが、この場合は違う。先程偶然に手にしたものであるにも関わらず、その封筒の宛先には、彼の名前が書かれていたからだ――尊敬なるオルフェウス様。達筆ではないが、取り立てて拙いとあげつらうほどのひどさもない、素朴な調子の文字を連ねられた何枚かの便箋の中で、差出人はイライ・クラークと名乗った。
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