天城
XiaoEhge
INFO𝐂𝐨𝐂「𝐏𝐘𝐗」𝐊𝐏 しのだ | 入江 唯
𝐏𝐋 夢魔 | 天城 雨
▸ 第一章「天国は無人」エンドD
▸ 第二章「濁流は無知」エンドG
▸ 最終章「楽園は無貌」エンドL-side A
両生還
m_matane_
PROGRESS4 ぐねぐね道をまっすぐ
「おい、落としたぞ」
「……あっ」
突然かけられた声にびっくりして振り返ると、知らないヤツがぼくのハンカチを差し出して立っていた。
「あ、ありがとうございます」
「ん」
ぼくがハンカチを受け取ると、そいつは頷いて歩き出した。ぼくとすれ違いざまにハンカチを拾ってくれたようで、ぼくとは反対の方向へ進んで行った。平日の朝、ランドセルと黄色い帽子が一方方向へ流れていく中で、薄汚れた格好のそいつは少し目立っていた。背が高いしぼくよりは年上だろうけど、大人には見えない。高校生くらいだろうかというのに私服で手ぶらなことから学校へ行く様子はなかった。
なんとなくぼうっとその背中を目で追っていたけれど、すぐに人波に揉まれて見失ってしまう。
8550「おい、落としたぞ」
「……あっ」
突然かけられた声にびっくりして振り返ると、知らないヤツがぼくのハンカチを差し出して立っていた。
「あ、ありがとうございます」
「ん」
ぼくがハンカチを受け取ると、そいつは頷いて歩き出した。ぼくとすれ違いざまにハンカチを拾ってくれたようで、ぼくとは反対の方向へ進んで行った。平日の朝、ランドセルと黄色い帽子が一方方向へ流れていく中で、薄汚れた格好のそいつは少し目立っていた。背が高いしぼくよりは年上だろうけど、大人には見えない。高校生くらいだろうかというのに私服で手ぶらなことから学校へ行く様子はなかった。
なんとなくぼうっとその背中を目で追っていたけれど、すぐに人波に揉まれて見失ってしまう。
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PROGRESS3 花泥棒
深く細く吐いた息は、室温に戻したバターにナイフを入れたときのようなだらしない手ごたえで空を切った。
夜の闇に、俺に怯えて震える男の顔と、骨のない生き物みたいにぐにゃりと俺の腕の中で崩れたニキの顔が順番に浮かんでは消える。ニキ。面倒ごとになる前に病院から逃げてきてしまったが、あいつの怪我はどの程度のものなのだろうか。跡や後遺症が残らないものだと良いのだが。生ぬるい夜の風が指の関節を触り、思わず呻いた。皮が剥けて血が滲んだそこは僅かな空気の揺れですら染みて痛んだ。故郷の稽古で拳を繰り試合をすることはあったが、手をろくに保護せず人を殴ったのは初めてだった。それに、手加減しない人間の暴力を真正面から受け止めるのも。身を護るために構えた拳は乾いた音を立てて肉や骨に何度も当たった。その嫌な感触はまだ消えない。
5653深く細く吐いた息は、室温に戻したバターにナイフを入れたときのようなだらしない手ごたえで空を切った。
夜の闇に、俺に怯えて震える男の顔と、骨のない生き物みたいにぐにゃりと俺の腕の中で崩れたニキの顔が順番に浮かんでは消える。ニキ。面倒ごとになる前に病院から逃げてきてしまったが、あいつの怪我はどの程度のものなのだろうか。跡や後遺症が残らないものだと良いのだが。生ぬるい夜の風が指の関節を触り、思わず呻いた。皮が剥けて血が滲んだそこは僅かな空気の揺れですら染みて痛んだ。故郷の稽古で拳を繰り試合をすることはあったが、手をろくに保護せず人を殴ったのは初めてだった。それに、手加減しない人間の暴力を真正面から受け止めるのも。身を護るために構えた拳は乾いた音を立てて肉や骨に何度も当たった。その嫌な感触はまだ消えない。
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PROGRESS2
あの頃。僕らが生まれたてみたいに何も知らなくて、それでも赤ん坊とは呼べない程度には傷まみれだった頃。
17歳の燐音くんはいつだって怒っていた。知識や常識がない故に納得できない事象が多く、それにぶつかるたびに怒った。周りにも、ものを知らなさすぎる自分に対しても。野菜の値段に怒り、電車の優先席に座る若者に怒り、ポイ捨てされているゴミに対して怒った。自分の常識と世間の常識の中でぐらぐらと揺れながら、プライドをすり減らしながら、それでも声を上げた。
怒るといっても声を荒げて暴れまわるわけではなかった。かたちのいい目をしっかり開いて、青いくらいにひかる白目にぎらっと怒りを宿して、理解の範疇外の対象を見つめた。その様子を見るたびに僕は、彼の心に小さな傷がついていく音が聞こえたような気分になった。失望して、怒って、それでも赦したくて立ち上がり続ける燐音くんに、「きれいごとだけじゃ世の中は回らないっすよ」と言ってあげられたらどれほど良かったんだろう。とはいえ、そんな残酷なことを誰も言えやしなかったに違いない。少なくとも僕には到底無理だった。背筋を伸ばして、透き通った眼で物事を見る彼を曇らせたくなかった。
7002あの頃。僕らが生まれたてみたいに何も知らなくて、それでも赤ん坊とは呼べない程度には傷まみれだった頃。
17歳の燐音くんはいつだって怒っていた。知識や常識がない故に納得できない事象が多く、それにぶつかるたびに怒った。周りにも、ものを知らなさすぎる自分に対しても。野菜の値段に怒り、電車の優先席に座る若者に怒り、ポイ捨てされているゴミに対して怒った。自分の常識と世間の常識の中でぐらぐらと揺れながら、プライドをすり減らしながら、それでも声を上げた。
怒るといっても声を荒げて暴れまわるわけではなかった。かたちのいい目をしっかり開いて、青いくらいにひかる白目にぎらっと怒りを宿して、理解の範疇外の対象を見つめた。その様子を見るたびに僕は、彼の心に小さな傷がついていく音が聞こえたような気分になった。失望して、怒って、それでも赦したくて立ち上がり続ける燐音くんに、「きれいごとだけじゃ世の中は回らないっすよ」と言ってあげられたらどれほど良かったんだろう。とはいえ、そんな残酷なことを誰も言えやしなかったに違いない。少なくとも僕には到底無理だった。背筋を伸ばして、透き通った眼で物事を見る彼を曇らせたくなかった。
m_matane_
PROGRESSモブがたくさん出てきます。多少の暴力表現があります。設定捏造過多。大丈夫なかたのみどうぞ。1
「ニキぃ」
「なあんすかぁ、燐音くん」
「お金貸してェ~♡」
「嫌っすよ~……、あっちょっと痛いっ、やめてお財布とらないで!」
「とってねェよ、借りるだけだっつってんだろ。今確変引いちゃって急いでんの、あとで10倍返ししてやっからよ、じゃあなァ!」
こはくちゃんは右手にクッキーの型を持ち、ぽかんと口を開けたまま動かなかった。というか、動けなかったんだろう。当たり前だ、突然背後から燐音くんが現れたかと思うと、こちらに驚く隙すら与えずあっという間に僕の財布から万札だけを抜き取って去っていったんだから。
「ふぅ、ひどい目に遭ったっすね~。んもう、料理してるときは埃立てないでっていつも言ってるのに。さっこはくちゃん、生地が温くなってダレちゃう前にさっさと型抜きしちゃうっすよ。アイスボックスクッキーよりバターは少ないけど、型抜きクッキーだってちゃっちゃと作業しないときれいな形にならないっすからね」
1732「ニキぃ」
「なあんすかぁ、燐音くん」
「お金貸してェ~♡」
「嫌っすよ~……、あっちょっと痛いっ、やめてお財布とらないで!」
「とってねェよ、借りるだけだっつってんだろ。今確変引いちゃって急いでんの、あとで10倍返ししてやっからよ、じゃあなァ!」
こはくちゃんは右手にクッキーの型を持ち、ぽかんと口を開けたまま動かなかった。というか、動けなかったんだろう。当たり前だ、突然背後から燐音くんが現れたかと思うと、こちらに驚く隙すら与えずあっという間に僕の財布から万札だけを抜き取って去っていったんだから。
「ふぅ、ひどい目に遭ったっすね~。んもう、料理してるときは埃立てないでっていつも言ってるのに。さっこはくちゃん、生地が温くなってダレちゃう前にさっさと型抜きしちゃうっすよ。アイスボックスクッキーよりバターは少ないけど、型抜きクッキーだってちゃっちゃと作業しないときれいな形にならないっすからね」
hiehiereitoko
DONE小学生燐ひめ特に説明もないが、天城が小学校に通っているし、兄メルが天城と同い年。
ふたりとも小6。
弾丸飛び交うここで理論武装をぶち壊してもう、子供じゃない。
ずっとそう思っていた。
HiMERUはずっと子供なんかではいられなかった。周りの奴らとは違うのだと、ずっと思っていたし、実際そうだった。
同級生は下品で、幼稚で、どうしようもない。
俺は文字通り、身体通り、見た目通り子供の、頭空っぽのあいつらとは違う。
だから、先生に仲間に入れてもらうように気遣われたときも、余計なお世話でしかなかった。
「え~、十条偉そうなんだもん。ゲーム持ってないし。インテリぶってていらつくし」
「おれたちのこと見下してるよな」
俺だってあんたらと行動するなんて願い下げだ。
どうせ高校までの辛抱だった。あと数年。今は六年だからあと四年我慢すれば、もう関わることもない。
本当は中学だって同じなのは嫌だ。それでもあの父親に頼み込んで塾に行かせてほしい、と頼むか?
2724ずっとそう思っていた。
HiMERUはずっと子供なんかではいられなかった。周りの奴らとは違うのだと、ずっと思っていたし、実際そうだった。
同級生は下品で、幼稚で、どうしようもない。
俺は文字通り、身体通り、見た目通り子供の、頭空っぽのあいつらとは違う。
だから、先生に仲間に入れてもらうように気遣われたときも、余計なお世話でしかなかった。
「え~、十条偉そうなんだもん。ゲーム持ってないし。インテリぶってていらつくし」
「おれたちのこと見下してるよな」
俺だってあんたらと行動するなんて願い下げだ。
どうせ高校までの辛抱だった。あと数年。今は六年だからあと四年我慢すれば、もう関わることもない。
本当は中学だって同じなのは嫌だ。それでもあの父親に頼み込んで塾に行かせてほしい、と頼むか?
tooka_4120
DONE一彩くんの台詞で「~を藍良から教えてもらったよ」的な台詞があるので教えてもらっているところを想像して描きました。一彩くんSNSやっているらしいけど、藍良くんから教えてもらって始めたのかな~なんて妄想してます…
tooka_4120
DONE🐇🐇※ キャラが見にくい気がしたので背景変更しました。2枚目は変更前。
前にツイートしてた内容をイラストにしました。よく見てみたらうさ耳もは勿論、衣装の構造も似てる気がするし、二人とも可愛いけどそれぞれ可愛さのベクトルが違うのも何か良いな〜!(たまにライブで並べてたりしてる…) 2