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    怪鳥

    @t_utumiiiii

    MAIKING謎時空の泥庭(青髭と怪鳥) ※日記のないキャラ(機械技師・狂眼(?))の言動を背景推理等から無理やり捏造してる。
    (6) 丸い形のヘッドライトが特徴的な社用の軽自動車(店主は「お前さんの顔に似ている」と言い、その車をトレイシーに宛がった)で出先から戻るなり早速シルクハットを取り、その内側で冷や汗を掻き通していたボブヘアに風を通しながら、行きがけに店主が入れ知恵をした「青髭」の屋敷でのことがどんな具合に薄気味悪かったかを、さながら飲まされた毒を吐き出すような勢いで喋り続けていたトレイシーは、「そうやって可哀そうだって言い出したのが、いちばん不気味だった。」と、苦いものを噛み潰したように顔を顰めてそう零す。作業台の上で酒瓶を傾けていた老店主は、それを興味もなさそうに聞き流していた。
     老人相手に話をしているとも、一人で必死に言葉を吐き出しているとも取れない調子で、トレイシーはぶつぶつと零す愚痴の内容を次々変えていった。「青髭の妻」が、トレイシーの目から見るとあからさまに人間であったこと。それにも関わらず、彼女はまるで鳥籠のような大きな釣り鐘型の檻の中に、一瞬人形と見まがうようなやり方で閉じ込められていること。トレイシーの見立てでは、彼女は高機能の義手義足を着用した生身の人間であるが、そもそも何故、彼女がそのような傷を負うに至ったのか? その大きな怪我が、彼女に正気のありかも見失わせてしまったのでは?
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    @t_utumiiiii

    MAIKING謎時空の泥庭(青髭と怪鳥)
    (1) 「青髭」というのはグリム童話の一つであるが、郊外に大層な屋敷を構えている彼は、近隣の町の住人からそう呼ばれている。郊外に建てた屋敷に閉じこもるように暮らし、後ろ暗い経歴のある大勢のものがそうするように、近隣のまともな地域社会と関わり合いになろうとしない、偏屈な独り身の金持ちが彼だった。
     青髭の屋敷には、得体の知れない連中が雇われている。日々飲み屋に入り浸って日銭を泡にしているような連中の間で、気前よく仕事を与える彼は「気のいい領主」のように親しまれているのだが、一方で、素行が良いと地元で折り紙付きの者が物は試しと乗り込んでみても、その男から仕事を賜ることはなく、追い出されるのがオチだった。
     そうやって追い出されるのならまだ良い。その屋敷に入ってくると、二度と日の目を見ないものもある。例えば、クリスマスに買い与えられたサッカーボールやラジコン、糸の切れたタコなんかが、ひとたびその屋敷の敷地に吸い込まれると、子供がどれほど泣きわめこうと、二度とは戻ってこなかった。迂闊に取り返そうとして屋敷の扉を叩けば、その日以降、青髭が雇っているに違いない素行の悪い連中からしつこく絡まれ、遅かれ早かれ、夜逃げ同然にその町を追われることになるので、もう誰もそんなことをしない。
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