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    成人式

    いずみのかな

    DONEパトレイバー ごとしの
    成人式の記憶の話です。ほんのりとしたかいごと風味つき。
    もうここにいないあの人、そしていまここにいるあなた。
    雨音 冬の雨は冷たく、溶けかかった氷の針が肌に細かく刺さるような日だった。
     厚く垂れこめた雲は暗く、「成人の日」という言葉の幸先の良さとは裏腹だ。仕事始めのあととはいえ、まだ小正月が終わらない時期だけあって、都内はまだ人が満タンになっておらず、おかげで特科車両二課は年末から今日までめでたく開店休業状態である。
     見映えだけで警備にイングラムを引っ張り出そうという警備部のお偉いさんのバカな提案をしのぶと二人で潰した甲斐もあり、年末年始からこの十日ほどは、両隊ともひろみが出汁から取ったというお雑煮(沖縄は出汁で中身を煮たものをいただくんですよね、と話してくれたが、「中身」がなになのか後藤には見当がつかなかった)を食べたり、榊が箱買いしてきた缶のおしるこで暖を取ったりと、きわめてささやかに正月を味わったりしている。今日まで長く独身で、大学のころは家に寄りつかず、そして警察学校に入ると同時に実家を出てそして警察官になったあたりからは、社会人の礼儀として年賀状を出すことと姪にお年玉を渡す以外の正月行事と縁が無くなって久しい後藤にとっては、お雑煮もおしるこも、久しぶりすぎて舞台装置のように感じられるものであった。
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