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    桜道明寺

    DONE藍渓鎮108話ネタバレ。
    建城 開け放しの窓から、身を切るような風が吹き込んでくる。
     戸口から、んじゃ行ってくる、という声が聞こえてくる。
    「よく学んでおいで」
     そう声をかけたが、もう出てしまったのか返事はない。
     窓の外を見る。重い雲が垂れ込めて、今にも降り出しそうだ。今年の夏は雨が多かった。そしてまだ秋の初めだと言うのに、木枯らしが吹き始めている。このままでは収穫にも影響が出るだろう。そのことに思い至って、申し訳ない気持ちになる。
     藍渓鎮に暮らす人々のために、暦通りの季節を運んでやりたい。だが雨は降り続き、それはいずれ雪になるだろう。どうしても晴れ間を生み出せない。数ヶ月前のあの日から、私の心は、ずっとこの空のように厚い雲に覆われてしまっている。空をすっきりと晴らせることができない。ここが私の霊域である以上、心に左右されるのは仕方のないことだが、私個人の鬱屈に人々を巻き込むわけにはいかない。皆には皆の生活がある。一度庇護したからには、日々の暮らしをつつがなく送らせてやらなければならない。そのことについて、私は長いこと思いを巡らせてきた。そして、ようやくその結論を出そうとしている。上手くいくかどうかは、半々といったところだ。反対する者も出るだろう。私に愛想を尽かす者も。
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    ナナシ/ムメイ

    DONE漫画版。隼人と竜馬と山咲さんと渓ちゃんと。隼人×山咲要素あり。
    人によっては、なんなら自分にも耳に痛いことだなと、思いついたはいいものの寝かせていたんだけど、もういいかと思って。

    あの世界に神隼人という個人の感情に寄り添ってくれる誰かがせめていてくれたらいいと、読み返す度に思います。
    ■ あなたをおもう「血も涙もない」「たかが学生の分際で何をわかったような口を」「学生運動に傾倒していた危険人物だろう、監視すべきだ」「あまりにも冷酷では」

    「あのような事を平気で出来るなど、到底人の心など無いし、我々とは違うんだ。精々利用させてもらおうじゃないか」
    「化け物には化け物をぶつけておけばいいさ」

     通りがかった部屋からそんな政府のお偉方だろう声が漏れ聞こえ、隼人は軽く肩を竦めた。
     ゲッター線研究とゲッターロボの維持にはそれだけで多大な予算を費やす。実際に恐竜帝国の侵攻が現実となり、従来の兵器がろくに通用しないとも明確になった現在、瀬戸際の防衛戦を繰り返すゲッターロボの必要性は明白にすぎたが、不満や何かがそれで消える訳でもなく、どれほど死の足音が迫ろうが、いやだからこそ、自分事と考えたくない人間も存在する。
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