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    無敵

    mayura_BL

    PAST猛者と無敵の日記念おめでとうございます&ありがとうございます!記念に初めて書いた斎藤さんと沖田さんの話を再録します。過去から現在のカルデアへ、みたいな話で、邪馬台国の時に居ても立ってもいられず書きました。長いのでお時間のある時ご覧いただければ幸いです。
    猫の話猫の話

    「安心してよ」

     僕は自分で言っておきながら自分のこの言葉のあまりの軽薄さを思った。

    「斎藤さんが安心なんて言うとおちおち寝てられませんね」

     だから当たり前のように沖田ちゃんは笑ってそう言い返してきた。そりゃあそうだ。だけれど、彼女にはもう、昔のように適当言わないでください!なんて言って飛び掛かってくる身体的余裕も、精神的余裕もなかった。代わりにこほんと小さな咳をして、笑った。

    「でも、お任せするしかないですね、これじゃあ」

     枕元の愛刀をゆっくり振り返って沖田ちゃんは言った。

    「猫がね、斬れないんです」
    「は?」
    「黒猫。来るんですよ、庭に。でも斬れない」
    「危ないよ、そんなことしてちゃあ」

     そっと彼女が刀に掛けた手の上から、自分の武骨な手を重ねて止めようとする。止めようとしたのか、ただ彼女の手に触れたかったのか、分からない。
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    泡沫実践

    DONEソロフォルです。

    6章前のふたりのお話ですが、メインシナリオを8章3節まで終わらせた手で書いております。
    ふたりが相互に友だち認識であることがとびきりに嬉しくて書き上げた幻覚です。無敵で幸福な錯覚を決して夢だと言わない友だちという関係性がすきです。
    隣の青を知っている ある男が、目の前の男の頰を打った。骨が軋む、音が、悲鳴のように鳴る。殴られた男は、畜生、と吐き捨て、その眼を憎悪に燃やし、裂けるほど右の頬を吊りあげた。眉下の皮膚で三角形を描いたその男は、素早くしゃがみこみ、道端の石を拾う。
    「…………ッ!」
     声にならぬ咆哮は、まさしく獣のそれで、あった。茹立つ眼の鈍色には赤が奔り、明確な攻撃の意図をもって、男はそれを投げつける。
    「ざけんなテメエが死ねッ、おっ死んじまえ、!」
     いっぽうの男もまた、明らかな攻撃の意図が、あった。石に打たれた左肩の痛みは、併し男の冷静をより失わせる効果を表した。分厚い手をぐっと折り曲げ、もう一発くれてやると、熱く息を巻く。
    「訳分かんねえ奴らの言葉に騙されやがって、テメエにとってこの村はその程度だってか? 死ね、どっか行っちまえ、あいつら諸共今すぐ、この村から、なあ、聞いてんのかボケが、クソッ、どっか行けよ、死ねよ、なあ、死ね死ね死ね死ね、死ねッ!」
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