Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    忸怩くん

    MOURNING【鋭百】いつの間にか眉見家への道へ行き慣れていた話
    日記 2回目の乗り換えを済ませて、空いた隙間に埋まるよう座席に腰掛ける。駅メロが流れてドアが閉まると電車が緩慢に動き出した。この路線だけなんだか足元の暖房が強いらしく、乗るたびにふくらはぎが一気に熱されて瞼がゆるりと重くなる。まだ眠ってはいけない、と眠気を吹き飛ばすよう頭を振る。
     走り出して少し、次の駅への到着アナウンスが流れ出した頃に、一昨日のやりとりのまま止まった眉見とのトーク画面を呼び出した。
    『おはよう、今電車乗ったよ』
     わかったと返事が来たのを確認して、再び画面を真っ暗に戻した。はじめの頃は乗り換え検索をしてその到着時刻を教えていたのに段々と大雑把になっていって、今では最後の電車に乗った時に連絡するだけになっている。乗り換えなんて調べなくても大体の所要時間と使うホームはもう覚えたし、そうすると正確な到着時間じゃなくてもうすぐ着くということだけ伝えられれば十分かと簡易化したのだ。ただ眉見はそんなざっくりとした連絡でも絶対に百々人より先に着いて改札前で待っているからそれが少し悔しくて、最近は少しずつ乗ったよの連絡を遅らせているのだ。それでも眉見を改札前で待ち受けるにはまだ至っていない。
    2183