Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    風景

    yokko_odakura

    PAST穣さんとつかさの日常風景
    絵ではないけど前に書いたやつ
    表から車の音が聞こえる。
    穣さんにしては帰りが早いから、何か荷物でも届いたのかな。最近はこんな田舎で近くにお店がなくても、なんでも通販で買えるから便利な時代になったなあと思う。
    俺は人の多いところが苦手で滅多に買い物には着いて行かないから、穣さんに頼むか通販で買うかのどちらかが多い。
    庭、という名のほぼ畑から道路の方に回って、誰が来たのかを確かめに行く。
    あれ、郵便とかの配達じゃなくて、普通の車だ。しかも県外ナンバーなんて、珍しい。
    車からはスーツ姿の男の人が降りてくる。
    スーツの人も、久しぶりに見た。見た感じ、穣さんよりも少し年下くらい?
    どうしよう、誰かが来るなんて予定は聞いていないし、今日の帰りは夕方くらいになるかもって言っていたから、まだしばらく帰ってこないんだけどな。
    この家の住所はごく近しい人にしか教えていないらしいので、変な人が訪ねてきたというのではないと思う。
    もし穣さんに用があるなら、時間が大丈夫そうなら上がってもらって、帰るまで待っていて貰えばいいか。県外からじゃ、また来るのも大変だろうし。その間に昔の穣さんの話とか、聞けたりしないかな。聞けたら嬉しいな……。
    どっ 2892

    三角のモノ

    DONE真八真。夏の終わりの風景。10月か11月に書いたやつ。『真下、少し困ったことになった』
     けたたましく鳴り響くコール音に携帯電話の通話ボタンを押した真下は、電話口から伝わってくるその困惑に慌てて事務所を飛び出した。案件を片付けてきたばかりでコートも鍵も手に持ったままだったので、置いたばかりの鞄を手に持つだけで準備が完了したのは幸いである。
     事務所の扉は施錠し、車のドアは解錠。後部座席に放り投げた鞄からは茶封筒が飛び出すが、真下はそれを無視してエンジンをかけるとアクセルを目一杯に踏み込んだ。
     その際に茶封筒へ行儀良く収まっていた紙達がおどりでて、後部座席の足下で絨毯のように広がる。しかし、これも真下は気にしなかった。というより気付いてもいなかった。
     頭の中には。豪奢だがどこか寂しい雰囲気の館に住む主が古い形の受話器を手に青白い顔で立ちすくむ姿しかなかったからである。

     ガレージの扉すれすれのところへバンパーをつけた真下は運転席の扉を半ば蹴りつけるようにして開け放つと、そのまま九条館の玄関扉まで走りよりドアノブを押した。
     しかし、扉は開かない。普段は鍵の一つもかけはしないのに、こんな時に限って重たい金属の抵抗が真下の掌に返ってくる。 7772