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    鬼島

    PoisonOakUrushi

    PASTきじあまでホワイトデー
    我儘 ペラペラと捲る雑誌は格闘技の記事ばかり。そもそもが、そう言う雑誌だけを買っているのだから当たり前なのだが、求める答えやヒントの無さに、がっかりと溜息を溢す。
    「って」
     後頭部への軽い衝撃に振り向けば、ベッドの上を陣取る天生目に、蹴飛ばされたらしい。本で顔を隠しつつも隠れない不機嫌な気配に、言いたい事は山とあれど、撤退を余儀なくされる。
     どうやら溜息がお気に召さなかったのだろうと見当は付くが、そもそもの不機嫌の理由には心当たりが無く、鬼島は眉を潜めて雑誌へ向き直ると、読んでるフリをしながら必死にこれ迄を振り返った。
     今日の朝は、ホワイトデーとは男性が女性に菓子を贈る日ではなかったかと、なけなしの知識で鬼島は首を傾げていた。とは言え、鬼島に手作りのクッキーをくれたのは、義母の那津美と義妹の愛海である。何くれとなく心配をして世話を焼こうとする那津美から、何かに付けても付けなくても、差し入れをされる事は多々あるので、礼を言いながら受け取った。その量が若干多い気がしたが、クッキーを見る愛海の目の輝きで、理由は直ぐに理解した。元々、甘い物は得意で無い事も有り、食後のデザートとして活用される事が決まった瞬間である。
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