Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    アビス

    wonka

    DONEアベルとアビス/アビアベ寄りですが左右不問
    悪夢を見たアベルの話
    nightmare母が刺された時のことは今でも夢に見る。
    もう乗り越えたことだと思ってはいてもその悪夢が訪れるたびに鮮明な映像で繰り返し見せつけられる凄惨な過去の光景。子供だった頃ほどは動揺しなくなったものの現実と見紛う悪夢はそれでも良いものではない。
    また今日も。ああ、この後母は殺される。二度と見たくない光景がまた繰り返される。頭にこびりついて離れないこの先の光景から目を逸らしたくても自分の意思で止める術のない夢の中では目の前の事象をただ眺めいることしかできない。母から食べ物を受け取った男が懐に忍ばせていたナイフ、それが母の身を切り裂く、その場に倒れ噴き出す赤い血でみるみる染まってゆく美しく優しかった母……夢に見なくとも忘れることのできないのにそれでいて何度も見た悪夢だ。そう思った矢先、血に染まる母の姿はみるみるうちにアビスに変わった。母の返り血を浴びた男の立っていた場所には鮮血の赤に染まる自分がいた。え、と思わず溢れた声は夢が現実が分からない。心臓がどくどくと音を立てて鼓動を早める。違う、アビスは助かったはず。そう自分に言い聞かせるも血溜まりなかのアビスはびくともしない。「お前を庇ってそいつは死んだ」どこからともなく声がした。違う、アビスは死んでない。「お前を庇ったせいで」「アビスは死んだ」違う、違う、そんなこと命じてない、望んでない。アビスは今でも……責め立てる声はアベル自身の声に似ていた。うるさい。耳を塞いでもその声は止まない。アビスの体から流れでた血が立ち尽くすアベルの足元にまで広がっていた。うまく息ができない。は、は、と自らの乱れる呼吸音が耳に響く。酸素が足りなくなっていく感覚に視界が暗くなった。
    2806

    circle_mlc

    PASTアビス本編軸、モブ目線のナタリア小説です。
    インゴベルト私室にあるナタリアの肖像画を描いた画家という設定のオリジナルモブが登場します。
    カップリング要素はありません。
    昨日ポイピクにログインしたところ、なぜか削除されていたので再投稿します。以前お読みいただいた方、スタンプを送っていただいた方、本当にありがとうございました!
    この腕が支えるもの彼女が部屋に入ってきた瞬間、空気が変わった。小声でおしゃべりをしていたメイドたちは背筋を伸ばした後、小さな少女に深々とお辞儀をする。部屋の入り口に立っている兵士も、開いた扉の隙間から敬礼している姿が見えた。この空間の主は今、この金色の髪の少女なのだ。
    「あなたが、私を描いてくださる方ですの?」
     よく通る凛とした声。真っ直ぐにこちらを見て微かに微笑んでいる。
    「その通りです、ナタリア殿下。本日はどうかよろしくお願いします」

     「私、あなたが描いたお父様とお母様の絵、大好きですわ!お父様の横顔は凛々しく、お母様は優しそうで」
     椅子に座ると、殿下は年相応の屈託のない笑顔を見せた。それでも、揃えた膝の上にきちんと手を乗せた美しい座り方で、絵を描きやすいよう気を遣っているようだ。
    3448