Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    バーム

    すぺ2

    MOURNINGバームクーヘンの日(3/4)に書いたバッドエンドじゃないバームクーヘンエンドを考えてみました。続きは「THANK YOUの日」(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14822429)のR指定になっています【バームクーヘンの日】

    「天童、引き出物はバームクーヘンで良いだろうか?」
    突然かかって来たマブダチからの電話に衝撃を受けてしまったのは、俺がまだそのマブダチへ別の感情を諦めきれていなかったからかもしれない。

    若利くんがポーランドのチームに移籍してきた年、俺は勝手にお祝いを兼ねてケーキを焼いた。ホワイトチョコで作ったプレートには『Best wishes』とわりと綺麗に書けていたし、スポンジ部分もムース部分も最高の出来だった。これからも今までも沢山の幸せが若利くんにもっともっと訪れますように。俺の方の店も忙しい中だったけど、今までよりもずっと近くなった物理的な距離に、俺自身が勝手に一人で舞い上がっていたのだ。
    ホールで焼いたチョコケーキを見た瞬間の若利くんのその驚いたような顔と、その後にほころんだ目元にまたもう一度、恋に落ち直してしまったのが、確か、数年前。
    「ありがとう。俺も嬉しい」
    スマホ越しじゃない生の若利くんのその時の声を一生忘れないでいられれば、そのままマブダチとして自制して一生過ごすことが出来ると思った。6号サイズしかケーキ型を持っていなかったのでかなり大きめに作ってしま 3750

    韮山小田

    DONEキスブラ身内ワンライ2 バームクーヘンエンド普段立ち入ることがないという理由だけで、こうも妙な気分になるものだろうか。
    古い古い記憶のひとつに、片手で数えられるだけの回数訪れたことがあった。
    その頃のキースはまだただの子供で、特別なことと言えば人一倍痩せて薄汚れていることくらいだった。
    母が見知らぬ男と出て行って。酒浸りの父はキースなど見えていないかのように振る舞う。空腹を訴えればようやく気付いたというように鋭い舌打ちを響かせて重い拳を打ち下ろした。
    生きるために家を出た。盗みを働くほどの知恵も体力もなかった子供を僅かでも生き永らえさせたのは、ここだった。

     ◆

    「ブラッドもようやく結婚か~俺たちもそろそろかなあ?」
    「どうかねえ。恋人に振られたばっかの誰かさんにはまだまだじゃねえの」
    「うう…。でも、俺が悪いんじゃあないからね、たぶん…」
    自身なさげに俯くディノは、つい先日恋人と別れたばかりなのだという。
    かく言うキースも、結婚を考えるほどに付き合いを続けた女性は一人もいなかった。
    ヒーローにはありがちな話である。
    「『仕事とわたしどっちが大事なの』なんて台詞を聞くとは思わなかったよね…」
    自分からアプローチしたのだという 1332