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    道化

    bach_otamama

    TRAININGベルイム。異端審問官の仕事中だと旅で野営になることもあるのかな、と。
    ラスト、カイムが当初よりも虚無を抱いてしまいました。
    個人的に、ベルナールやリタ、母親へ抱く思いはヴィータとして暮らした後天的なものでメギドとしてのカイムは王(ソロモン)の道化として振舞っていて、それが追放の要因なのかな、というイメージがあります。
    ある夜に 王都から遠く離れた村の方が、異端審問が曲解されていることが多い。人命がかかっていることが多いため、馬の利用が許されていても異端の審議のために何日もかけて旅をすることがしばしばあった。極力街道沿いを通るとはいえ運よく村や集落があるとは限らず、野営になることもある。
    「最初の不寝番は私がしましょう」
    「悪いな」
    馬を連れているとなると、野盗に襲われることもある。暖を取る意味でも、火の番は必要だった。

     元から頑健な方だと自負しているが、その夜は疲れているはずなのにベルナールはなかなか寝付けなかった。
    「眠れませんか?」
    「カイム」
    「いや、大丈夫だ」
    カイムは穏やかに微笑んでいる。背こそ高いが、まだ二十歳にもなっていないカイムはベルナールよりもずっと線が細い。その彼が平然としているのに疲れたとは言い難く、ベルナールは首を振った。
    1945

    しゃけ

    DONE道化、又は道化師とは滑稽な格好や言動などをして他人を楽しませる者の総称。
    舞台の裏側エリトラで逃げる三人を、遂に殺す事が出来なかった。やっとだ。やっと、死ぬ建前が出来た。これで良い。これで良かったんだ。数十年間この身体を蝕み続けた仮面を剥がし、床に落とす。そして、渾身の一撃で割る。これでこの呪いを受ける奴も未来永劫いなくなった。やっと《俺様》は〈俺〉になったんだ。自分の身体が思い通りに動かせるのは久しぶりだな。
    思えばくだらない人生だった。産まれてから一度も愛を与えられずに売られ、身を粉にして働いても主人に慰みものにされ、挙げ句の果てには骨董品の呪いに取り憑かれ、今の今まで〈俺〉として生きていなかった。
    だがその人生にも幕が降りる。飛行船の高度が着々と低くなっている。〈俺〉が何もしなくても瓦礫に埋もれて窒息死するか、もしくは運良く生き残るか。いや、確実に死のう。もう充分じゃないか。兄を殺した時点で分かっているじゃないか。〈俺〉があの時、スナイパーで心臓を撃ち抜いて殺した〈俺〉の唯一の家族。〈俺〉の大切な、大切だった兄。そう、リアムだ。お前らには信じられないだろうけどな。血の繋がった家族を殺す。それが呪いの唯一の解呪方法だった。ただ、それだけだ。恨むなら恨め。憎むなら憎め。呪いたければ、呪ってしまえ。〈俺〉は全て受け入れる。そうでもしなければ、《俺様》が殺した人間の怨みが晴らせないからな。
    1595