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    黄泉

    nashireonnn

    DONE「しつこくて頑固なシミみたいなもんですよ、困りますね!」

    人外鯉登対人間鯉登×人間月島(転生パロ)
    夢の中で黄泉竈食ひさせようとするヤンデレ味の強い人外鯉登と、人間らしい感情で月島を愛してる鯉登がバチバチしてる話。またしても何も知らない月島さん
    (細かい設定はついったに画像で投げます)
    白無垢に落ちた血のように 広く、広く。果てなどないように見える白い空間になんとはなしに佇んでいると、不意に声を掛けられた。
    「どうした、月島軍曹?」
     掛けられた言葉に、ぼんやりとしていた意識を取り戻す。目の前にいつの間にか現れた男が、椅子に腰掛けながら優雅な手付きでティーカップを持ち上げている。静かにカップを傾けて中身を飲む仕草をすると、男は月島を見上げて言った。
    「突っ立っていないで貴様も座れ。上官命令だ」
    「……は」
     軍服に身を包んだ男にそう言われ、月島は椅子を引いて向かい側に腰掛ける。被っていた軍帽を脱いで机の端に置き、背筋を正して向かい合う。月島が着席したのを見て、男は机に置かれたティーポットを傾けてその中身を空いていたもう一つのカップに注いだ。それを月島に差し出し、男はもう一度手元のカップの中身を煽った。
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    ciff_2

    DONE好きなひとが水と酒しか口にしないはなし
    銃→独要素あり

    黄泉戸喫をすると帰って来られないといいますが、なかには戻ったひともいるそうです。しかし彼らは二度とこの世の物を口にできなくなったといいます。
    鞍馬山神隠し事件 まただ。俺は、ぼんやりしながらグラスに口をつける観音坂さんを見つめた。このひとは、酒を呑むときつまみを食べない。大勢で呑むときも、サシで呑むときもそうだ。かつて空きっ腹のまま酒を呑むと悪酔いすると忠告したことがあるが、すみませんと苦く笑ってそれきりだった。チーズは嫌いですか。ナッツもありますよ。トマトが平気ならカプレーゼでも。この店はウイスキーに合うチョコレートを出してるんですよ。あのとき俺は必死だったろうか。それでも、僕のことは気にしないでくださいと、観音坂さんはグラスを両手で握りしめて離さなかった。意外と頑固な一面に俺は意地になりかけたが、すみませんとちいさく縮んでいく彼にそれ以上なにも言えなかった。楽しそうに笑っている彼を肴にしてこそ、俺の酒はうまくなるからだ。ショットグラスを傾けて、午睡のさなかにいるような彼が浮かぶ琥珀を飲み干す。ふと、思った。そういえば、酒の出ない食事会の席でも観音坂さんが箸を握る姿を見たことがない。彼はいつも興味がなさそうな顔で他人の話を聞いてやりながら、水を飲んでいた気がする。待てよ。彼がなにか食べているところを、俺は一度でも。考え込んでいると、おずおず名前を呼ばれて我に返った。俺の話つまらなかったですか。観音坂さんは捨て犬のようなまなざしで俺を見つめてそう言った。俺の話か。どの口が言うんだよ。俺は笑ってしまった。そんなことはありませんよ。でも、できればもっと別の話も聞かせてください。そうだな、たとえば、あなたがいつもひと前で物を食べない理由なんてどうでしょう。俺は見逃さなかった。そのとき落日の燃える凪の海に波が立った。気のせいですよ。いいえ、そんなはずはありません。どうして言いきれるんです。そんなことも分からないほど、あなたはいつも伊弉冉さんの話をするのに夢中だったのですね。俺が悪い顔で笑うと、観音坂さんは眉間に皺を寄せてグラスから手を離した。そして俺がひとりでつまんでいたカナッペをひとつ口に入れると、飲み代を置いて席を立ってしまった。・・・・・・やっちまった。
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