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    姉弟

    shiraishiMrs

    DOODLE人/中世/姉弟妹 捏造名前
    今はもうここに居ない 神に見放されたといっても、それは今に始まったことではないのだと思う。
     あのお姉ちゃん、ウリャーナが──妹が、兄の「お上品な遊び仲間」にするみたいに──激昂するのを、ふたりは小さくなって部屋の隅の空気を分けあうようにして、聞きたくなかったけれど、でもたしかに聞いていた。歳近い妹、ナターリヤは半分泣いていた──それだけでじゅうぶんに悲劇的な事件だと痛感できた──が、イヴァンは昼間のようにはめそめそしなかった。妹の手前、というのもあったかもしれないが、冷厳なナターリヤが喉を詰まらせ、弱虫のイヴァンが神経を尖らせざるを得ないという、その場は異質な状況にあった。
     それでもイヴァンは、姉の言葉のひとつひとつを、高温の鉄の塊で心臓に押し焼かれるような心地で聞いていた。銀色の鈴が転がるような、軽涼なウリャーナの声。その声で、煮凝りみたいな憎悪をはらんで「おまえ」とか「くそ女」とか最悪な言葉を紡ぐのが、腐って軋む、染みのある天井ごしに響いてくる。かつてならウリャーナはぜったいにそんな粗野な言葉を使わない──もっと言えば別人のように怒鳴り散らすこともしない──と信じていたのだが、怒りや憎しみは人間を壊すのだと思い知る。それがたとえば清貧な聖職者でも、血の味も知らぬ貴族の息子だったとしても、ろくでなしの母親のもとに生まれついた貧乏娘だったとしても、「その時」は平等に訪れるものなのだとイヴァンはすでに気がついていた。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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